本の中身をご紹介します!
 
写真をはじめたいとカメラを買ったものの、 取扱説明書だけではよくわからない……。そんな あなたに10日間で簡単に写真の基本をマスターし てもらうことが本書のねらいです。新しい撮影機 材を買い足さなくてもよいように、今ある手持ち のカメラ・レンズで写真を理解してもらうことに、 要点を絞りました。空いた時間を利用して1日数 ページのペースで無理なく読んでもらえます。

1日目 ボケを楽しもう! 絞り
2日目 カメラを構える位置と高さで写真は変わる! ポジションとアングル
3日目 明るさを調整しよう! 露出・露出補正
4日目 質と向きで印象が変わる! 光
5日目 ホワイトバランスでひと工夫! 色
6日目 バランスよく見せよう! 構図
7日目 動きを表現しよう! シャッター速度
8日目 遠近感を取り入れよう! レンズ
9日目 ねらいにしっかり合わせよう! ピント
10日目 日常を非日常へ! モノクロ写真

ボケを楽しもう! 絞り

知ると知らないでは大違い! 絞りの効果とは?

一眼カメラを購入し、はりきって撮影! でも写真 を見てみると「これまでと大して違わない……」 なんてことありませんか ? 実はその主な原因はカ メラの設定にあります。カメラのお任せモードは とても便利な機能ですが、失敗しないことが最優先されるので自分の思い描いた写真になるとは限 りません。そこでまずは「絞り知る」ことからは じめましょう。むつかしいカメラの仕組みは知ら なくても大丈夫です。「絞り」を選んで撮るだけ で写真が変わります。

2枚の違いは一目瞭然。同じ被写体でも絞りひとつでイメージは大きく変わります。

カメラを構える位置と高さで写真は変わる! ポジションとアングル

ポジションひとつでこれだけ変わる

絞りの効果やボケのつくり方がわかってきたら、次は、ポジションとアングルを意識してみるとよいでしょう。ポジションとはカメラを構える「位置」のことで、アングルは「角度」のことを言います。同じ被写体でもカメラ位置と角度を工夫することで写真の見栄えが変わります。

 

明るさを調整しよう! 露出・露出補正

明るさが調節できるから写真は楽しい

写真を撮ってみて一番に気になるのは「丁度よい明るさで撮れたかな ?」ではないでしょうか。たいていはカメラ任せでも大丈夫ですが「なんか暗いなぁ」「思ったより明るいぞ」なんてこともあるはず。 そこで知っておきたいことは、カメラについている明るさを変える機能です。この機能が使えるようになれば、写真の明るさは思いのままに調節できるし、写真を撮るときの不安もなくなります。

写真は、暗く写したもの「-」カメラ任せ「0」明るく写したもの「+」の3枚です。ここでは真ん中の「0」の写真がきれいに撮れています。こうやって3枚の写真を見比べるとそれぞれの明るさの違いや、自分の好みの明るさがよくわかります。

質と向きで印象が変わる! 光

光を知ろう

露出は光量のお話でした。でもいった い光って何なのでしょうか? 光が変わ ると写真はどうなるのでしょうか? 光 のことを知っておけば写真を撮るとき 大いに役立ちます。

点光源で撮った写真を見てください。半球状の建物に太陽の反射が映り、光が強く当たっているところが特に光っているのがわかります。これが点光源の特徴です。点光源は光の当たる部分とそうでない部分の明るさの差が極端に大きくなります。はっきりした黒い影が出るのも点光源です。

ホワイトバランスでひと工夫! 色

光には色がある

光の基準は太陽というお話はしましたが、太陽光線は時間帯や場所によって色が違うことを知っていますか? また、白熱電球・白色蛍光灯・ストロボにも色の違いがあります。光源や条件によって変わる光の色について理解しましょう。

 

バランスよく見せよう! 構図

写真にも絵心は必要

よく「絵が下手だから写真をはじめました」と言う人がいますが、昔、写真をはじめた人たちの多くは画家たちで、あのピカソやダリ、ウォーホルも写真の作品を残しています。写真をするにも絵心は必要ということです。6日目のテーマは構図。構図とは写真をバランスよく見せる絵づくりのことで、いくつかのパターンがあります。構図の基本パターンを覚えて絵心を養いましょう。

 

動きを表現しよう! シャッター速度

裏の主役、シャッター速度

ここまで「絞り優先オート」を中心に話を進めてきましたが、7日目は、絞りの裏側にあるシャッター速度についてです。これまではあまり気にしていなかったシャッター速度ですが、その効果を知って自分で選べるようになれば、写真表現の幅がグンと広がること間違いなしです。

カメラの撮影モードには「絞り優先オート」と同様に「シャッター速度優先オート」という機能もついています。動きをコントロールしたい撮影ではこのモードに設定します。まずは自分でシャッター速度を選べるようになりましょう。

遠近感を取り入れよう! レンズ

レンズの本当の使い方

写真をはじめる前からレンズに広角と望遠があることくらいは知っていると思います。カメラ屋さんで触ってズームして何となく遠くが撮れることや広く撮れることもわかっているはず。でも何かが違うのはなぜ? その疑問を今日は解決しましょう。


レンズの名前として使う○○ミリレンズの○○の部分を焦点距離と言います。○○ミリ~○○ミリと記してあればズームのできるレンズということです。そして、レンズの数字が小さいと広角(広い範囲が撮れるレンズ)、大きいと望遠(遠くが撮れる)レンズです。

 

ねらいにしっかり合わせよう! ピント

ピント合わせの種類

ピント合わせにはカメラが自動で行ってくれる AF(オートフォーカス) と自分でピント位置を決める MF(マニュアルフォーカス)があります。 被写体やねらいに合わせてモードを 変えられるようになれば表現できる幅は大きく広がります。

オートフォーカス
カメラがピントを合わせてくれます。基本の AF-Sと動体に強い AF-Cモードの2つがあります。
すれ違う大型船を撮影。揺れる渡船の上からでは不安定な体勢になりMFではピント合わせが難しい状況です。AFなら簡単にピントを合わせることが可能です。

 
 
マニュアルフォーカス
主にレンズのピントリングを回して自分の目でピントを合わせる方法です。
歩道橋の柵越しにギターを背負い電車を待つ女性の姿が見えました。AFでは手前の柵にピントが合ってしまって素早いピント合わせができないので、MFにしてピントを合わせました。

 

日常を非日常へ! モノクロ写真

モノクロ写真のススメ

写真表現は何もカラーだけではありません。ぜひトライしてほしいのがモノクロ写真です。「まだ」「これから」という人に向けて、最後の10日目はカラー写真とはまた違ったモノクロ写真ならではの楽しみ方をご紹介します。
日常を非日常へ。手軽にその表現を楽しめるのがモノクロ写真です。テレビ・インターネットなど日常ではカラー映像を見る機会が圧倒的に多く、モノクロであること自体が不自然で微妙に違和感があります。その違和感を活かした「雰囲気がいい」「レトロ感がある」表現がモノクロ写真の特徴です。


アンティークショップで見かけたシングル盤のレコード。懐かしい昭和のアイドルもカラー写真でそのまま現実を撮影しては色があせてしまっていて可哀想です。

モノクロ写真のよいところは、限りなく現実によく似た「モノクロの世界」という少しの噓をつけることです。モノクロ写真にするだけで、不思議と笑顔が可愛くなったような気がします。

 

著者プロフィール
田邊和宜(たなべ・かずよし)
1968年福岡県生まれ。大阪芸術大学写真学 科卒業後渡米。シカゴ、セントルイス、ニューヨークで写真を学び帰国後、大阪芸術 大学写真学科研究室勤務を経てフリーランスとなる。主に「光・形・ボケ・色・ブレ」を表現のテーマにして写真ジャンルを問わない作品づくりをしている。写真展に「記憶」(2008年/キヤノンギャラリー銀座)、 その他グループ展多数。
公益社団法人日本 写真家協会会員。