私にとってのRAW現像

 

【解説、作品:吉住志穂】

みなさんはRAW現像をしていますか。「RAW現像」という言葉は聞いたことがあっても、やったことがない、難しそうと思っている方は多いと思います。私の場合、記録画像形式はRAW+JPEGで、JPEGに加えてRAWも同時記録しています。撮影時に「こんな写真が撮れた!」というイメージが欲しいので、フレーミング、ボケ具合はもちろん、RAWでの調整が可能な露出やホワイトバランスも撮影時に設定し、JPEGでもそのまま使えるくらいまでに仕上げています。

それならばRAWを撮る必要はなさそうですが、より作品を自分のイメージに近づけていこうとすると、花の影になった暗部だけを明るくしたり、色ごとに彩度を調整したりなど、カメラ内の設定では難しい調整も必要になります。そこでRAW現像を行います。私が教えているアマチュアの方でも、ある程度、基本的な撮影に慣れて、自身の作品の仕上がりにこだわりを持ち始めたころ、RAW現像に挑戦する方が多いですね。

今回使用したRAW現像ソフトは「Luminar AI」。AI(人工知能)が搭載された写真現像&編集ソフトで、AIが写真を読み取り、おすすめの仕上がりを提供してくれるというものです。擬似的に人物の背景をぼかしたり、平凡な空にドラマチックな雲や太陽光を加えるといった特殊効果が豊富ですが、もちろん、基本的な現像機能が搭載されています。まずはRAW画像を取り込み、編集画面からさまざまツールを選んでみましょう。操作は簡単で、画面を見ながらスライダーを左右に動かすだけでOK。元に戻すにはスライダーの部分をダブルクリックすると簡単に戻せます。また、履歴が残されていくので、効果をかける前に戻ることもできます。どの項目がどのような作用をするのか、効果が自分のイメージに合う、合わないは実際にやってみるのがいちばんなので、はじめは上のツールから順番に効果を試してみるといいですよ。

画像1 菜の花と青空・白い雲

もともとPLフィルターをかけていたのですが、Luminar AIの編集メニュー、「エッセンシャル」の「スカイエンハンサーAI」を使うと、青空の青がぐっと締まりました。これだけでも、かなりメリハリが出ましたね。さらに、同じ「エッセンシャル」の「アクセントAI」を強めると、雲の陰影が強調されてきました。最後にカラーハーモニーの華麗を強めることで、全体の色の抜けがよくなっています。たった3つの工程ですが、オリジナルに比べて、ぐっと青空の雰囲気が強まりました。

オリジナル画像

スカイエンハンサーAI(エッセンシャル>補正AI

アクセントAI(エッセンシャル>補正AI

華麗(プロフェッショナル>カラーハーモニー)

画像2 チューリップ

主役のチューリップの背景をぼかしつつ、手前にもボケを入れ、やわらかな雰囲気を作り出しています。程よく光が当たっていたので、花びらの透けた感じが出ていますが、奥の花びらのテカリが気になります。そこで、「エッセンシャル」の「ライト」から「ハイライト」を下げることで、明るい部分のトーンが抑えられました。同時に「シャドウ」を上げると、ちょっとした暗部も明るくなり、全体にハイキーな画像になりました。次は「エッセンシャル」の「カラー」から「自然な彩度」を選び、鮮やかさを増すことで、カラフルでポップな印象になります。これで完成でも良いのですが、最後の味付けとして、「クリエイティブ」の「光沢」から「ソフトフォーカス」を選択し、適用しました。ソフトフィルターをかけたような効果が得られ、光が滲んだようなやわらかな仕上がりです。この「ソフトフォ―カス」は「詳細設定」からソフト度、明るさ、コントラスト、そして、色合い(暖かさ)の調整が可能です。花の写真ではソフト効果とはとても相性がいいので、このような細かい設定ができるのが嬉しいですね。

オリジナル画像

ハイライト/シャドウ(エッセンシャル>ライト)

自然な彩度(エッセンシャル>カラー)

ソフトフォーカス(クリエイティブ>光沢)

画像3 スノーフレーク

雨上がりの早朝、スノーフレークの花に水滴がついていました。そこにちょうど光が差し込んで、背景がキラキラと輝いていました。シャドウ(エッセンシャル>ライト)を上げて、ハイライト(エッセンシャル>ライト)を落とすことでコントラストを弱めます。さらに、緑色がくすんだ感じだったので、「自然な彩度」(エッセンシャル>カラー)をアップしたというところまでは画像2と同じパターン。ここで、ユニークなネーミングの「神秘」(クリエイティブ)という項目の適用量を増やしました。すると、光が滲んだようになり、フォギーフィルターのような効果がかかりました。また、「ムード」(クリエイティブ)のLUT(ルックアップテーブル)ではさまざまな仕上がりをアートフィルター感覚で選ぶことができ、同じ画像からイメージを広げていくことができます。

オリジナル

ハイライト/シャドウ(エッセンシャル>カラー>自然な彩度)

神秘(クリエイティブ)

LUT – “Sepia”(クリエイティブ>ムード)

LUT – “Color Punch Cold”(クリエイティブ>ムード)

画像4

実は「Luminar AI」はJPEGでもRAWと同じ項目の調整ができるのです。RAWデータから現像した方が残されている階調の幅を広く再現できますが、暗部のトーンを上げたり、色合いの調整やソフト効果など、JPEGでも気軽に調整ができます。RAW現像に慣れていない方も、ぜひ写真編集にトライしてみてください。

写真はJPEGから効果を加えたものです。曇天時にバラを撮影したのですが、コントラストが低く、色が濁ってしまいました。大幅にスマートコントラスト(エッセンシャル>ライト)を上げ、青や赤紫色を加えてドラマチックに。さらに、周辺光量落ちを補正するビネット(エッセンシャル)ではより周辺部を暗くするようにして、トイカメラで撮影したような雰囲気を出しました。最後に光沢(クリエイティブ)からソフト効果(ソフトフォーカスと詳細設定のソフト)を加えて出来上がり。基本的には効果はほどほどにかけるのがおすすめで、あまり効果をかけすぎると現実離れしてしまうことが多いです。この画像もオリジナルとはかなり異なる印象の仕上がりですが、アートフィルター感覚で現像を施すのも楽しいものです。この現像ソフト「Luminar AI」は無料で体験できますので、みなさんもぜひ試してみてください。

オリジナル

コントラストアップ、色合いの調整など(エッセンシャル>ライト)

ビネット(エッセンシャル)

ソフト効果(クリエイティブ>光沢)

吉住志穂

吉住志穂(よしずみ・しほ)

1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。自然の「こころ」をテーマに、花のクローズアップ作品を撮影している。女性ならではの視点でとらえた作品が多く、2021年11月にTAギャラリーにて写真展「夢」を開催。また、写真誌での執筆や撮影講座の講師を務める。

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