私にとってのRAW現像

 

【解説、作品:藤村大介】

夜景にはたくさんの色があり、トワイライトの青以外にもオレンジや緑、アンバーなど、さまざまな色が絡みあうことで絵柄を構成する。見た目に近い色を再現することが、最も夜景写真を美しくさせる。

現像ソフトとして完全な機能を備えた「Luminar AI」

 撮影後は、いつも被写体や撮影場所に対し一礼をしてから帰路につく。今日も良い写真を撮らせていただきありがとう、という気持ちは絶対に欠かさない。そして作品づくりは撮影だけでは終わらず、仕上げに入る。
私が現像で最も大切にするのは、「撮影時の想い」を忠実に再現することだ。どのように表現したいのかによって撮影設定は変わるが、夜景は完璧には撮れないことが多い。極限の表現をするほど、カメラは私の想いから離れた動きをする。
 そこで、Luminar AIを使って現像してみたが、これは現像ソフトとしては完璧だと感じた。特に、夜景で頭を悩ませがちなノイズ処理は秀逸で、ほかのどんなソフトよりも素晴らしい。これもAIの成せる技なのだろう。
 私にとってRAW現像とは、作品を世に出すための礼儀でもあり儀式なのだ。

雨の日の夜景は美しい。夜の空港で誘導される飛行機のライトが反射し輝いた様子は、路面が濡れてなければ撮影できない。夜景撮影では、いかに光を捉える事ができるかが鍵となる。

直感的な操作性とノイズ除去機能

 いわゆる「撮って出し」の画像を使うべきだという意見もあるが、残念ながらデジタルカメラは万能ではなく、現像ソフトの持つ役割は大きい。そこに、人工知能(AI)を搭載した現像ソフト「Luminar AI」が誕生した。
自分の想いを見透かしたような仕上がりを、シンプルな作業で実現してくれるLuminar AIは、RAW現像の概念を根底から覆してしまった。実際に使用してみると、直感的かつ簡単な操作性に驚いた。AIならではの判断で「こうしてほしい」「あんな感じに」という曖昧な作業をコントロールしてくれるのだ。

before
after

 

ハイライトが強烈な夜景の場合、低コントラストな仕上げ設定で撮影する。しかし風景まで軟調になるので、仕上げのコントラスト調整が必要だ。
ここではテンプレート「雲コレクション」内の「ダイナミック」を2/3ほど適用した。

  夜景作品において私が最も心配するのは、デジタルカメラの宿命であるノイズ問題だ。どのようなカメラもノイズは必ず発生する。特に、私のように極めて特殊な方法で撮影する場合、ノイズは切っても切れないものと考えていた。
 今まではカメラメーカーの純正ソフトを使っていたが、Luminar AIはノイズ処理も極めて優秀だ。一般的なノイズ軽減処理は、画面をぼかすことでノイズを見えなくするのだが、そのため被写体の細かい部分のディティールが潰れてしまう。しかし、ではそのようなことが少ない。被写体をピクセル単位の細かい部分まで認識してノイズと背景を判別し、ノイズのみを消去してくれる。これは、今までスタンプツールなどでゴミの隣のピクセルを地道にコピー&ペーストする作業を、そのまま自動で行っている感じである。
 こうした機能から、Luminar AI はRAW現像からノイズ処理まで、あらゆる仕上げ処理を行える優秀なソフトだと感じた。


before

after

 

極限の光を掴みたい自然の夜景は露出が難しい。特にこのような逆光でコントラストが高い状況では現像に頼る事がある。
テンプレートの「簡単風景写真コレクション」から「森林河川」を100%で使用した。

機能紹介

①直感的に操作できるインターフェイス

好みの色を選択し、彩度とルミノシティを変更。単色毎に直感的に調整できるインターフェイスは他の画像処理ソフトを使っている人にも馴染み易い。

②部分的に露出補正するグラデーションマスク機能

グラデーションマスクで空の部分だけ露出を抑え、同時に彩度も若干上げて夜らしさを強調した。濡れた路面に反射したライトが、よりドラマチックな雰囲気になった。

③種類豊富なテンプレートを選択可能

テンプレートには、ワンクリックで画像を仕上げてくれる見本が並んでいるので、それぞれ当てはめながら見比べるのもよいだろう。詳細な設定もできるが、そのままでも十分な仕上がりになる。

藤村大介(ふじむら・だいすけ)

1970年生まれ。香川県出身。アシスタントを経て独立後、世界500都市以上を取材。「旅」をテーマに世界を撮り、風景、街並み、夜景、世界遺産等を撮影。2002年、世界の夜景だけでの個展を富士フォトサロン(銀座)にて開催。現在の夜景ブームの先駆けとなる。
(公社)日本写真家協会(JPS)正会員、日本旅行写真家協会(JTPA)正会員。

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