第1位 島岡章一(長野/ニッコールクラブいいだ支部,飯田写友会)
【選評】単写真でも通用する②笑顔(クローズアップ)が全てを物語っています。他の作品とは距離感を変え、さらに不特定多数から「特定の人物」へと視点を切り替えることでメリハリをつけ、組写真の芯を作っています。主役ありきの行事だけにそこをいかに表現するかが評価の分かれ目です。構成はオーソドックスに時系列に並べていますが、①ことの始まり、緊張感、②喜び、緊張からの解放、③粛々と行われる儀式の様子で再度緊張感を描き、④主役がその後どうしたのか、見る側の疑問に答えるイメージで静かにフィニッシュしていく抑揚のある見事な流れです。それらを支えているのは的確な撮影ポジション、迷いのない構図、狙い定めたシャッタータイミングによる写真力。経験値の高さが遺憾なく発揮された作品でしょう。
ニコンD700・AFニッコール24~120ミリ・UV・F8・① 1/500 秒②1/640 秒③ 1/320 秒④ 1/1000 秒・①② ISO200 ③ISO400 ④ISO800・①②④三脚・エプソンPX-5002・松本洋紙店絹目調/長野県阿智村・2月上旬,12:00頃
第2位 髙木博規(愛知)
【選評】サスペンス映画の印象的な場面を切り取ったかのような作品構成です。吸い込まれるように拝見しました。「訳を聞こうじゃないか」は寅さんの名ゼリフですが、桜の咲く頃に何があったのかを想像するのがこの作品の楽しみかた。構成は①見る側を釘付けにする花越しの強い視線。②汚れたものを落とす手水シーン。③神社の幟の前で喪服に桜色の日傘をさす全身カットと3作品ともに「ワケあり」風なご婦人の眼や所作、首の傾げ具合などの思わせぶりにハラハラドキドキする仕掛けになっています。無駄を削ぎ落としたカット割りの如く、リズム良く次のシーンへ繋いでいる構成が出来過ぎのようですが、??はないので見事と言えるでしょう。妄想は多いほど作品づくりを助けてくれます。
キヤノンEOS5D MarkⅣ・プラナーT*50ミリ・①③F1.4・1/8000秒②F4・1/1600秒・ISO200・エプソンSC-PX5VⅡ・ピクトリコプロセミグロスペーパー/名古屋市・4月中旬,10:00頃
第3位 辻 慶二(高知)
【選評】「何これ」と思わず叫んでしまった衝撃作。小さな子がブツブツ言いながら一人遊びを楽しむように作者の脳内に見えた宇宙空間を映像化したのが本作です。いざそれらを映像化しようとしても、多くの場合、単発的なイメージは浮かんでも組写真で表現できるほどの枚数を揃えるのは至難の業。アイデア倒れとなり、お蔵入りするのが関の山でしょう。しかし、作者はかつてどこかで見たようなシーンを見事に身近な被写体で再現することに成功。モノクロ化により現実感をなくし、想像力を掻き立てる工夫をしました。ひとしきり興奮したあとに冷静に本作を見返すと「一体誰が見ていた視点なのかな。①は別の宇宙船を目撃したのでは」と思った途端にまた鳥肌が立ち、作者と同じ宇宙を旅していました。
キヤノンEOS5D MarkⅡ・EF16~35ミリ・①③F8②F16④F22・①②1/100 秒③ 1/200 秒④ 1/60 秒・① ② ISO400 ③ ISO100 ④ISO1600・キヤノンPIXUS PRO-10S・キヤノン写真用紙光沢ゴールド/須崎市・11月中旬,15:00頃