第1位 吉川 稔(奈良/ニッコールクラブみやこ支部)

12月号 推薦「好奇の目」

立木 こんなまだら模様のロバがいるんだな。ロバといったら世界的に有名なのはドン・キホーテに出てくるロシナンテで、愚鈍な動物だから、こんな目をするとは思わないよね。冒険に出ることもなく、この中で一生を過ごすのかな。そう思うとちょっと恨めしそうな目に見えて面白い。
―――目にクローズアップする方法もありますかね?
立木 全身だと説明過多になることもあるから難しいところ。近寄って目を活かす方法と広く撮って目を見せる撮り方、どっちもできる場面。背景の空の大きさで環境が伝わるし、少し傾いた不安定さも目の力を強調させるのに役立っているから、これでよかったってわけ。
リコーGRⅢ・GR18.3ミリ・F4.5・1/320秒・ISO100エプソンSC-PX5VⅡ・松本洋紙店絹目調自宅付近・5月下旬,16:00頃

 

 

 

2位 喜舎場和広(愛知)

6月号 推薦「突風」

―――カメラマンが多く集まる鯛祭りでの撮影です。
立木 有名な祭りでも自分の視点を探そうとしているんだね。しかもこのファッションに違和感がありながら撮ると新しいものを手にすることがある。
―――ローアングルにして人物を空に抜いています。
立木 空抜きの人物は明快。今やデジタルカメラのバリアングルモニターによって楽々撮れるようになった。小津監督のローアングルがオマージュとして蘇るね。たった1メートル視線が下がるだけでこれほどイメージが変わるというのを皆が認識し始めた。
ソニーα6400・E10~18ミリ・F4.5・1/500秒・ISO100・エプソンSC-PX5VⅡ・松本洋紙店写真用紙・愛知県南知多町・7月下旬,16:00頃

 

 

 

第3位 松尾秀夫(愛知/全日写連,浜松写友会)

10月号 推薦「侵入者」

立木 写真って現場にいないと撮れないし、偶然が必然のチャンスとして巡ってくることがある。それを焦らずにきちんと撮れるのかが大事で、一方で興奮しすぎると冷静な目が持てないから、経験がものをいうときもある。
――――とはいえ、奥のシロクマ、真ん中のアオサギ、これだけで奇跡の組み合わせですが、さらにもう一つの手が。
立木 この瞬間が現れたときの驚きと、撮ったあとの満足げな顔が思い浮かぶけど、これだけ揃うことはそんなにない。シロクマの両手をついて謝っているような姿と何かを見つめるアオサギ、それぞれが役者のようでいいよね。水面への映り込みが臨場感を高めている。ただ、もう少し広く撮ったらどうだったのかな、と思うけど、一瞬の組合せをよくとらえたね。
ニコンD750・AFニッコール24~85ミリ・プログラムオート・ISO400・エプソンSC-PV5VⅡ・富士フイルム「画彩」プロ・豊橋市・6月上旬,14:00頃

 

 

 

第3位 松川元紀(静岡/浜松写友会)

7月号 推薦「おじいちゃんの横笛」

――――おじいちゃんが昔覚えた横笛をみんなに聞かせているところです。
立木 こういう家族の写真ってだんだん撮れなくなってきている世の中。懐かしさなのか、もう憧れのような感じなのか、いずれにしても目を引くよね。他人のご家族を撮らせてもらっているとは思えないくらい輪の中にいるようで臨場感もあるな。
――――それぞれの表情もいいですよね。
立木 おじいちゃんの手つき、表情、そして家族の楽しそうな雰囲気、もう嫌みのない平和すぎるくらいの写真。コロナ以後、こういう世の中に戻ってほしいと望むよね。
ニコンDf・AFニッコール24~120ミリ・F8・1/250秒・ISO320・エプソンPX-5V・富士フイルム「画彩」プロ・豊川市・7月下旬,16:00頃