1月号 「抱擁」渡壁孝雪(愛知/中日写真協会,写遊会ラビット,写楽会寺子屋)

1月号「抱擁」渡壁孝雪(愛知)

【選評】無機質な背景と生物との組み合わせに目を惹かれた作品です。逆光を選ぶことで背景の輪郭やサギの羽が輝き、主役と背景の色と形が対照的であることを強調しています。人工物が嫌厭されるのは、自然界の被写体を活かすのが難しくなるからです。この作品からは、人工物に囲まれた世界で生きる野生動物のリアルな姿を見ることができました。画面の美しさだけでなく、人と自然との関係性を考えさせられる作品となっています。
キヤノンEOS6D MarkⅡ・シグマAF150~600ミリ・F13・1/1000秒・ISO1000・三脚・キヤノンPIXUS Pro9000 MarkⅡ・キヤノン写真用紙光沢ゴールド/豊川市・9月下旬,16:00頃

 

 

 

2月号 「ハレの日」今永謙二(三重/キヤノンフォトクラブ大阪)

2月号「紅に染めて」相田廣美(埼玉)

【選評】いい天気、いい瞬間、素晴らしき秋の日。そんな言葉が瞬時に頭をよぎりました。新郎さんの笑顔が素敵ですし、ヒガンバナを入れ込んだ構図も見事です。最後尾には頭を抱えているような男性がいますが、もしかして新婦のお父さんでしょうか? 真偽はさておき、さまざまな想像ができる楽しい一枚でした。全体的によくまとまっていますが、画面真ん中のヒガンバナの数など、もう少しインパクトを出せればさらに良くなると思います。
キヤノンEOS6D・EF24~105ミリ・F16・1/750秒・ISO800・キヤノンPIXUS PRO-100・キヤノン写真用紙光沢プロ/半田市・9月下旬,16:00頃

 

 

 

3月号 「採餌」畠中耕治(広島/フォトクラブ虫干)

3月号「採餌」畠中耕治(広島)

【選評】まるで巨大重機! 強調したい部分だけ切り取ることで、印象強い作品になりました。背景の濃い色と前脚のラインが画面周辺を囲み、強調したい顔と獲物に視線が引き込まれるようになっています。オレンジ色に輝くアクセントや、主役と同色の背景がカッコいいです。主役の身体を大きく切ったことを感じさせないフレーミングも絶妙。昆虫の美しさと面白さが見事に表現されました。
ニコンD610・タムロンSP90ミリマクロ・F6.3・1/400 秒・ISO800・キヤノンPIXUS PRO-100・富士フイルム「画彩」プロ/大竹市・9月下旬,14:00頃

 

 

 

4月号 「ノカンゾウ」浅井明美(愛知/YKフォトクラブ)

4月号「ノカンゾウ」浅井明美(愛知)

【選評】岩壁から海面を覗き込むアングルですが、切り立つ岩峰越しに空を見上げているかのようにも見えます。そのダブルイメージがかっこいいです。波と岩が画面の対角線上に並び、動と静が対象的に表されています。花のオレンジ色を中心に、葉の緑色、海の青色など彩りも綺麗です。画面中央で円を描く波と花が目線を集め、そこから放射状に視界が広がっていくことで、無駄なく画面を楽しむことができます。
キヤノンEOS R・RF24~105ミリ・F13・1/200秒・ISO2000・キヤノンPIXUS PRO-10S・ピクトリコプロセミグロスペーパー/田原市・8月下旬,15:00頃

 

 

 

5月号 「冬の阿蘇」橋本勝英(広島/大竹写友会)

5月号「冬の阿蘇」橋本勝英(広島)

【選評】大地の息吹を思わせる作品です。勢いよく立ち昇る噴煙の形をしっかりとらえています。山は芋虫のようにシワが刻まれて、動き回っているようです。地球自体が生物であると感じます。雪山と煙の白っぽい風景をあえてモノクロにして、質感を強調させたところがかっこいい。画面の周囲もスッキリと余計なものが写っていないため、噴煙と山の対比に注目しやすくなっています。
ニコンD70・AFニッコール300ミリ・C-PL・F11・1/60秒・ISO100・三脚・キヤノンPIXUS PRO-100・富士フイルム「画彩」プロ/阿蘇市・1月下旬,10:00頃

 

 

 

6月号 「龍の爪」平井正一(東京/写団薬師)

6月号「龍の爪」平井正一(東京)

【選評】渓流の映り込みは珍しい被写体ではなく、撮り方もオーソドックスなものです。しかし今回、最も惹きつけられた作品でした。行雲流水を表現しているようでもあるし、タイトル通り龍の爪が空間を引き裂いているようにも見えます。中央に暗い部分があるとドーナツのように間が抜けた印象になりやすいのですが、この作品は、逆にそれが主役となって写真の中へ鑑賞者を誘っています。このように想像力が掻き立てられるのは、撮影者がしっかりしたイメージを持って、形状のわかりにくい水流をまとめることができているからです。
キヤノンEOS5D MarkⅢ・EF70~300ミリ・C-PL・F25・1秒・ISO50・三脚・キヤノンPIXUS PRO-100・ピクトリコプロセミグロスペーパー/君津市・1月上旬,10:00頃

 

 

 

7月号「孤高」橋本英幸(三重/愛写道,フォトサークル写真人,梅川紀彦写真講座)

7月号「孤高」橋本英幸(三重)

【選評】王者の風格が見事に表されています。力強い眼や風になびく羽は、モノクロにすることで形の格好よさが強調されています。光の当たり方や羽の向き、ボケの模様まで無駄がありません。被写体の間や画面端にできる余白は、撮影者の意図や感情で変わります。この作品からは、作者が表現したかったハクトウワシの気高い姿をしっかりと感じることができます。
ニコンD7200・シグマAF18~300ミリ・F6.3・1/250 秒・ISO100・エプソンSC-PX5VⅡ・ピクトリコプロセミグロスペーパー/和歌山県白浜町・8月上旬,14:00頃

 

 

 

8月号 「漁場へ急ぐ」渡壁孝雪(愛知/中日写真協会,写遊会ラビット,写楽会寺子屋)

8月号「漁場へ急ぐ」渡壁孝雪(愛知)

【選評】先を急ぐ黒服の群衆の中、白いドレスで踊っているさまは、まるでバレエダンサー。伸びやかなポーズが高速シャッターによって、美しく写し出されています。真正面のカメラ目線も力強く訴えかけてきます。同じ方向を向いている鵜たちは我先にと混乱しながらも、サギのためのスペースをしっかりと空けているのが、演劇のようで面白いです。上下に均等な余白があり、ステージも整っています。違う性質のものが組み合わさり、不思議な違和感と一体感が生まれ、奥深いストーリーを感じる作品になりました。
キヤノンEOS6D MarkⅡ・シグマAF150~600ミリ・F8・1/2000秒・ISO1600・三脚・キヤノンPIXUS PRO-10S・キヤノン写真用紙光沢ゴールド/刈谷市・11月上旬,6:00頃

 

 

 

9月号 「ひと休み」貝増弘行(栃木/片岡写真教室)

9月号「ひと休み」貝増弘行(栃木)

【選評】主役と背景が一体となった面白さと、色合いの美しさに惹かれました。弧を描く葉の縁を綱渡りするかのようにとまっているチョウは、目にしっかりとピントが合うことで力強い印象になっています。緑色の変化だけで描かれた背景もかっこいい。接近して写された狭い空間の中に、無限に広がる時空を感じさせる作品です。
富士フイルムX-T3・XF80ミリマクロ・C-PL・F7.1・1/80秒・ISO800・キヤノンPIXUSip8730・富士フイルム「画彩」プロ/那須塩原市・6月上旬,7:00頃

 

 

 

10月号 「森の守り神」三浦明彦(宮城)

10月号「森の守り神」三浦明彦(宮城)

【選評】睨むようでもあり、諭すようでもある流し目に惹き付けられました。一瞬の決めポーズをとらえながらも、フレーミングが秀逸。背景は主役を引き立てながら、さり気なく状況を伝えています。画面いっぱいに十字を切る枝や杉の葉、小枝の一本一本が丁寧に切り取られることで、狭い範囲でも森の深さを感じます。さまざまな物語をフクロウが語っているかのような、想像力を膨らませてくれる作品です。
オリンパスOM-D E-M1 MarkⅡ・DGバリオエルマー100~400ミリ・F6.3・1/250秒・ISO1600・キヤノンPIXUS PRO-100・富士フイルム「画彩」プロ/登米市・12月中旬,14:00頃

 

 

 

11月号 「晩秋のほとり」浅井明美(愛知/YKフォトクラブ)

11月号「晩秋のほとり」浅井明美(愛知)

【選評】レッドカーペットを歩く白いドレスのようで、とても優雅な雰囲気です。気品のある赤と黒だけで背景が構成されていて、インパクトがありました。四隅四辺の余白が均等に黒くなることで、紅葉がギュッとまとまり、その形も面白いです。白鳥は白トビ気味でディテールが損なわれているのが少し残念。しかし写真の先にある物語へと、想像が広がる作品です。
ソニーα7RⅢ・FE100~400ミリ・F16・1/1000 秒・ISO500・キヤノンPIXUSPRO-10S・ピクトリコセミグロスペーパー/南アルプス市・11月中旬,11:30頃

 

 

 

12月号 「昇る」畠中耕治(広島/フォトクラブ虫干)

12月号「昇る」畠中耕治(広島)

【選評】糸を登るクモに背景を重ねることで、独特の世界観をつくりだしています。私には背景が北アルプス槍ヶ岳の岩峰に見えました。暗雲が渦巻き、威圧的にそびえ立つ山と、か細い梯子を登る登山者を重ねたコラージュのようで、とても面白いです。クモの位置が下方に寄っていることで、まだまだ険しい道が続いていることを連想します。ひと目見ただけで、物語がパッと広がっていくような作品です。
ニコンD610・タムロンAF90ミリマクロ・F4・1/1000秒・ISO800・キヤノンPIXUS PRO-100・富士フイルム「画彩」プロ/大竹市・12月下旬,11:00頃