長時間露光を楽しもう♪  光の跡の撮り方  

 ―シャッターを開けた長い時間を1枚の写真に閉じ込めて撮るのが私の夜景撮影の手法。技術の進歩で手持ちでも夜景は撮れるが、画質を求めると長時間露光にはかなわない。―(フォトコン12月号 P162 フォトコンG『光の跡』より)
肉眼では見ることができない光の跡。この光の跡を撮影可能にするテクニックが“長時間露光”三脚を使って楽しむ長時間露光の撮影テクニックを解説します。

 

 

 

 

長時間露光は三脚を使って

(写真1)長時間露光なら光跡の撮影も可能。手持ちでは絶対に無理な手法です。 F11 13秒 ISO200

暗い夜の撮影で撮るには、「ISO感度を上げる」と「露光時間を伸ばす」の二つの方法があります。最近のデジタルカメラは性能が進歩しているので、ISO感度を上げてもかつてのようなノイズまみれの画質ということはあまりありません。この方法を応用すれば、手持ちで夜景を散ることも可能です。しかしやはり感度に比例してノイズは増えていくので、画質重視なら長時間露光です。露光時間を伸ばす場合、都会や市街地は明るいので、100から800ぐらいの低いISO感度でも数秒~数十秒の露光時間で撮ることができます。こちらは画質の面でも有利で、この秒数ならノイズ等もほぼ無視できるレベルです。露光中はカメラを固定しなければならないので三脚を使うので、軽快な撮影は難しいです。夜に撮る風景写真、という感じでしょうか。カメラの大きさに見合った、しっかりしたつくりの三脚が必要です。

 

 

 

 

ピントも露光もオートでOK

(写真2)ピントは左のビルに合わせようがスカイツリー本体に合わせようがほぼ同じ。あまり神経質に考える必要はない。 F11 15秒 ISO100

暗い夜はAEもAFも効かないので、撮影はすべて手動? いえいえ、夜景撮影の被写体はカメラの目には十分明るいので、私はデジタルカメラで夜景を撮り始めた当初からすべてオートです。絞り値を選びたい場合は絞り優先オートで、光跡を撮る場合など、露光時間を選びたい場合はシャッター速度優先AEを使います。私が使っているカメラでは30秒まではオートで撮れるので、それ以上で撮りたい場合は露光は手動になりますがバルブにします。夜景の被写体はほぼ無限遠にあるので、ピント合わせもそれほど気にせずカメラに任せましょう。ただフォーカスゾーンは広く設定しておくのが鉄則。スポット1点などの狭いゾーンでは、そこが夜空などの暗い個所に重なるとさすがにAFは効きません。

 

 

 

 

ホワイトバランスは自由に

色を補正するホワイトバランスですが、夜景撮影では強調するために使います。残照の時間帯のトワイライト夜景では「太陽光」を、日がすっかり暮れてからは「白色蛍光灯」が似合うでしょうか。ただ現実の光景とは大きく異なる、青白い夜景なども面白いですね。私たちが行うのは測定ではなく撮影なので、自由な色合いも楽しみましょう。ピクチャースタイルは派手目な「風景」を選択することが多いです。ただこれらは後述するRAWで記録しておけば、撮影後に家のパソコンソフト上で変更することが可能です。

 

(写真3・4)この2枚の写真は、実は同じRAWデータからホワイトバランスを変えて現像したもの。
写真3は「白色蛍光灯」で、写真4は色温度手動で青色を強調した。F11 15秒 ISO100

 

 

記録はRAWで

(写真5)慣れないうちはjpeg+RAWで、慣れてきたらメモリーの節約のためRAWだけで記録してもよいでしょう。

一般的に画像はjpegで記録することが多いですが、夜景の場合はRAWでも記録しておきましょう。jpegは撮影した写真を後から明るさや色を変更することは画質的に無理なのに対し、RAWではソフトを使ってホワイトバランスや多少の明るさを変更してもそれほど画質が落ちることはなく、しかも元のRAWデータはそのまま変更されません。長い露光時間の夜景をjpegだけで記録する場合、色や明るさをその都度背面モニターで確認して試行錯誤するのは効率的ではありません。一方RAWでは1枚のデータさえあれば、何度でもそれらの変更が後から可能です。撮影時にホワイトバランスを設定するのは、背面モニターで確認する際に色味をイメージしやすいためです。

 

 

 

手振れ補正スイッチは入れる? 切る?

(写真6)これはかなり大きくブレてしまったものだが、通常は拡大しないとわからないブレも多い。

暗い光景を手持ちで行う場合に絶大な威力を発揮する手振れ補正スイッチ。でも三脚を使った長時間露光でも使う? 答えはノー。そもそもカメラは三脚に固定されているので、ブレの心配はありません。しかもONでは装置の動きで画像を揺らしてブレを防ぐので、その揺れがブレの原因となります。私も時々切り忘れるので、撮影後の画像はその場で最大倍率にしてブレやピントの確認をします。ピンボケになることはほとんどないものの、手振れ補正スイッチの切り忘れや強い風、それに三脚のネジなどの締め忘れでブレてしまうことは時々あります。その場で確認すればすぐに撮り直せますが、家に帰ってから気が付けばすべて終わり、ゲームオーバーです。

 

【講師profile】

川北茂貴・かわきたしげき 1967年3月京都市生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後にストックフォトや海外旅行のガイドブックの撮影などで世界中を巡る中で各地の美しい夜景に触れ、自分でも撮り始めて夜景写真家として今に至る。日本写真家協会(JPS)会員。Canon EOS 学園東京校講師。

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