「ピントがぐっと来る時。それが私を興奮させるの」言葉の選び方も独創的、
アメリカ人女性写真家ティナ・バーニーをご存知ですか?
1945年ニューヨーク生まれ。
60〜70年代を代表するゲイリー・ウィノグランドらの
ストリートフォトグラフィーから一線を画す写真家として80年代に頭角を現し、
現代写真の新しい時代を築きました。
大型ビューカメラで家族や友人を撮影し、
東海岸の上流社会の日常を切り取ったカラー写真が代表作。
ほぼ等身大にまで引き伸ばされた壮大な作品を見ると、
写真の空間に惹き寄せられるような不思議な感覚を覚えます。

先日チェルシーのギャラリーでバーニーの作品を久しぶりに鑑賞してきました。
初期の作品は被写体として家族や友人をとらえた私的な写真が特長的。
いわゆるスナップ写真とは異なり、
大型カメラを用いた写真は映画のワンシーンを思わせ、
日常生活を描写したオランダの風俗画をも彷彿とさせます。
大型カメラでの撮影のため室内では光量が足りず、
被写体に動かないよう指示を出すこともあったとか。
撮影向けの舞台をセットすることなく、
あくまで日常生活における一連の流れの中で手際よく撮影をする。
そして仕上がった作品は、様々な要素が満ち溢れている。
それは1枚の写真から物語が展開するように、
人物の行為、手や腕の線、背景のインテリア、壁掛けの絵画など、
全てが融合し、写真の世界が展開されていきます。

ファインダー越しに、ピントがきてぐっとくるシャッターチャンスに
興奮を覚える。
そんなバーニーの「ターン・ミー・オン」と表現した言葉から、
写真への情熱が伝わってくる作品展でした。