第1回 花火の撮り方

 難しいイメージのある花火撮影。何度か撮影してみたけど見たときの印象よりも弱くしか写らなかった……という悩みも、設定ひとつで迫力のある、雰囲気のある花火写真を撮ることができます。特殊な機材がなくても大丈夫。カメラと三脚があれば夜空に咲く大輪の花を写すことも可能です。夏の花火シーズンを前にカメラの設定や設置方法を確認して、美しい花火写真にチャレンジしてみましょう。

情報収集

ネットやSNSなどで
情報収集

 開催日時はもちろん、会場までの交通手段や会場地図、さらには開催当日の天候など多くの情報を入手しておくことが初めて行く花火撮影の成功の秘訣です。インターネットの情報サイトが充実しているので入手しやすくなりましたが、まれに古い情報も混在しているので注意が必要です。当日の開催可否などは主催者あるいは主催自治体のホームページ等で確認しましょう。打ち上げプログラムも花火の種類や打ち上げ間隔を把握できますのでぜひ入手してください。

場所の推測・確保

明るいうちに
現場入りが理想

 花火を撮影するには打ち上げ地点から500メートルくらい離れた場所が理想です(それより近い有料観覧席などは見上げる形になってしまうので撮影しづらい)。また当日の天候次第では煙に巻かれて撮影どころではなくなってしまうので、風上あるいは横風になるような場所を、気象情報をもとに見つけましょう。有名な花火大会は例外なく混雑します。開始ギリギリでは撮影に良い場所の確保ができず、また暗い中での準備も困難です。できれば開始2時間前くらいの明るい時間に到着するようにしましょう。

撮影の道具

  • カメラ
  • レンズ
  • 三脚
  • レリーズ
  • ライト
  • フィルター
  • 雨具

明るいうちのロケハンが成功の近道

開始2時間前でも多くの人が場所取りをしているため焦ってしまい、最初に着いた場所から動けず結果的にあまりいいポジションでなかった、ということもあります。周囲が暗く、危険もありますので会場準備が整ったお昼過ぎあたりからゆっくりロケハンできれば理想的です。

設定

基本がわかれば
あとはタイミングだけ

撮影モード
打ち上がった瞬間から開き終わるまでの時間が花火により違うため、バルブシャッターが使えるマニュアル露出モード(M)を使用します。バルブシャッターモード(B)が独立しているカメラはそこに設定してください。
絞り
ISO100ならF11、ISO200ならF16を基準に、花火の明るさや構図の中に含まれる花火以外の被写体(建築物の照明、空や水面への反射、花火の煙の明るさ)により適切に絞り込みます。
シャッター速度
バルブ(bulb/B)に設定。写し込みたい花火のイメージに合わせてレリーズのシャッターボタンで開閉します。レリーズの付かないカメラは3〜5秒に設定して、シャッターボタンを指の腹でやさしく押すように撮影して下さい。
ISO感度
三脚を使用する場合はカメラの最低感度(ISO100、200等)に設定します。 手持ち撮影の際は開放絞りで手ブレしないシャッター速度になるよう、高感度(ISO3200、6400等)を使用しましょう。
ホワイトバランス
オートホワイトバランス(AWB)で問題ありませんが、構図にある他の被写体に合わせるのもいいでしょう(例:屋台の電球の赤味を残したい→晴天、ビル群の明かりによるグリーンかぶりを抑えたい→蛍光灯・電球)。
ピント
 マニュアルフォーカス(MF)にして、無限遠あるいは打ち上げ場所に近い距離の被写体にあらかじめ合わせておきます。ズームレンズで焦点距離を変えた場合はピント位置も変化するレンズが多いのでその都度合わせ直します。
その他の設定
 長秒時ノイズ除去機能はOFF→ノイズ除去中に打ち上がってしまう花火が撮れなくなってしまう可能性があるため
 手ブレ補正機能をOFF→三脚を使用するので誤作動しないように切ります

撮影の手順

撮りたいイメージに
合わせて撮影する

三脚を設置
 スローシャッターを使用するので安定した場所に立てましょう。混雑する会場では立って撮影できないので、座った状態でアイレベルを確保できる高さに設定しましょう。(三脚使用禁止の場合もあるので要確認)
焦点距離の選択
 撮影ポジションにもよりますが標準ズームレンズがいちばん使いやすいでしょう。アップもねらうためにいきなり望遠ズームレンズにしてしまうと全容が入りきらない場合もあります。
構図を決定
花火だけでもいいですが、陸上の建造物等を入れ込むと雰囲気が高まります。初めての花火会場で打ち上がる高さの予測ができない場合は、縦位置で少し空を多めに入れた構図にしておくと安心です。
タイミングを合わせる
「“ポンッ”と打ち上げ用火薬の爆発音が聞こえたらシャッターを開き、花火が開ききったあたりでシャッターを閉じる」のが1発の花火を記録する最も基本的な方法です。2〜3発を写し込んで打ち上げが一段落したところでシャッターを閉じてもいいでしょう。

間を置かずに打ち上がるスターマインはにぎやかな印象を短時間で写し込むことができる。花火が重なることが多いので露出オーバーにならないよう、絞り込んで撮影するのがポイントだ。
F18・4秒・ISO100

海岸での花火大会では定番の水中から打ち上がる花火。横に広がるタイプが多いため横構図が似合う。縦構図から変更している間に撮り逃さないよう、プログラムをしっかり把握しておこう。
F11・4秒・ISO100

大会の花形である尺玉等の「割物」と呼ばれる花火は高度が必要なため打ち上げから開くまでの時間が長い。構図中の明るい被写体が露出オーバーにならないよう注意し、夜空に大輪の花を咲かせよう。
F16・10秒・ISO200

服部考規(はっとり・たかのり)
1973年 神奈川県生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。風景写真家・竹内敏信氏の助手、写真制作会社勤務を経てフリーとなる。写真専門学校・写真教室講師や写真雑誌の執筆等で活動中。
東京ビジュアルアーツ講師、フォトカルチャー倶楽部講師、NHK文化センター講師、よみうりカルチャー講師、クラブツーリズム講師、朝日アウトドア教養講座講師。
http://www.takanori-hattori.jp/