私にとってのRAW現像

 

【解説、作品:萩原史郎】

RAW現像によって写真に思いを織り込み、作品へと昇華させる

 私の作品には、必ずと言って良いほどRAW現像の工程が含まれている。なぜか。色や明るさ、階調といった写真にとって極めて重要な要素は、デリケートな調整があってこそ紊得のいく見栄えが完成し、自分の思いを織り込むことができると思っているからだ。

 そうだとすればRAW現像ソフトの重要性は計り知れない。私が求めるのは、シンプルな操作画面、わかりやすい操作性、必要十分な機能、高画質の生成などだ。当たり前の話かもしれないが、最初にソフトを使うにあたって前者2つはとても重要で、これによってソフトに対する向き合い方が決まる。後者2つは言わずもがなのことで、これなくしては長く使い続けられない。これらの点をLuminar AIは見事にクリアしている。自分の写真を作品へと昇華させる相棒として、Luminar AIは十分な役割を果たしてくれそうである。

【写真1】画面下部のシャドウに隠れた熊笹の様子、山並み直上の黄金に焼けた空の色など、期待通りの結果になってくれた。


 Luminar AIと聞いて、「ああ、空を変えるアプリねと仰るあなた、正解!正解だが、それはアプリの一側面を言い当てているだけに過ぎない。確かにトリッキーなこともできるが、その根底にあるのはAI技術。それがあることで、通常レベルのRAW現像なら、お茶の子さいさい。しかも非常にシンプルに並んだ調整項目を、上から順番に、必要な項目を選んで操作するだけ。

 日本のアプリに親しんだ方は、多少言葉の違いに戸惑うかもしれないが、それは数回操作をすればすぐに慣れる。直感操作と言う言葉があるが、まさに本ソフトはそれに相当する操作性を持ち、選んだ項目のスライダーを左右に動かすだけだ。画像の前後比較をしながら、自分が「こうしたい」という思いが叶う調整項目を見つけて操作をすれば、これまで難しいと思っていたRAW現像が、身近なものになるはずだ。「LIMINAR AI」は体験版が用意されているので、何はともあれ試してほしい。

【写真1の現像行程】

RAW現像前

RAW現像後

1)補正

「アクセント」はAIによってシャドウやハイライト、トーンなど12の調整を1つのスライダーで効果的に行う。この画像に対してはシャドウを中心に効果がかかり、見た目に近い印象になった。

2)ライト

ここでは「暖かみ」というホワイトバランスの調整と、「ハイライト」を使うことで、画像全体の朝焼けの雰囲気と黄色い空の質感を出すことに成功している。

3)光学

「色収差除去」と「フリンジ除去」にチェックをいれて、山際に現れたわずかな滲みを除去した。


 「LIMINAR AI」の真骨頂は「テンプレート」にあると言ってもいい。ジャンルを選び、気に入った文言を選ぶだけの簡単なステップで、あっという間に画像が変身する。これだけでも十分なレベルに到達するが、もしももう少し手をかけたいと思うなら、「テンプレート」操作から「編集」操作へ移ればいい。コレと思う編集を加えて完成させるというルートを辿るのも、Luminar AIの使い方の1つだ。

RAW現像前

RAW現像後

曇天の条件で撮影した山肌の桜風景。ボヤっとした写真となってしまい、このままでは平凡な印象だ。そこで「テンプレート」の「風景コレクション」にある「もっとはっきり」を使ってみたところ、文字通り、色が浮き立ちメリハリのある写真になった。これを手動で行おうとすると、慣れないうちは難しい。「テンプレート」機能の魅力を感じた一枚だ。


花の風景をふんわりと仕上げたい、そんな場合に重宝するのは「クリエイティブ」にある「光沢」だ。ここを開くとプルダウンメニュー内に「ソフトフォーカス」という調整項目がみつかる。「適用量」を右へスライドさせればソフト効果がかかる。さらに下部にある「詳細設定」を開けば、4つの項目に対して微調整も効く。至れり尽くせりである。

before

after

コスモスの群落を撮影。後から画像を見ていたらフト効果をかけたくなった、そんな場合に簡単にソフトフォーカス効果を付与できるのが「光沢」だ。ソフト量や明るさ、コントラストや色の暖かみや冷たさまで調整できるのは秀逸。


「ツール」とは別の項目として用意されているのが「ローカルマスキング」機能だ。この中に「グラデーションマスク」と言う機能があるが、これがハーフNDフィルターの役割を果たしてくれる。朝や夕方の変化が激しいときや、水がかかるような現場では、フィルターワークが難しいこともあるが、こういうフィルターを後から使えるとわかっていれば、現場では安心して撮影に集中できる。

使い方は簡単。例えば画像の一部だけを明るくしたい場合に「グラデーションマスク」をかけ、「露出」を変えるだけ。やってみれば、思いのほか簡単に狙い通りの仕上げができることに気づくだろう。

RAW現像前

RAW現像後

岩から伝う水が上から零れ落ちる現場。フィルター操作もままならない状態だが、あとからRAW現像をすれば、ハーフNDフィルターを使ったのと同じように仕上げることができる。

赤く色づいている部分が調整できる範囲。この範囲は狭くもできるし、広くもできる。後から位置を変えることも、角度を変えることもできる。被写体に対して万能に働く。

この写真では「露出」を「+1.00」にして、画面の下部だけを明るくしている。


 今回は、ごくごくさわりだけをお伝えしたが、魅力の一端に触れていただけなのではないかと思う。ただこれはあくまでもLuminar AIの入り口に過ぎない。

 Luminar AIには豊富なツールが用意されており、そのほとんどがスライダーを動かすだけの簡単な操作性を持っており、その結果は即座に画像に反映される。難しい理屈を知らなくても、スライダーの操作を楽しみながら、自分だけの思いを詰め込んだ作品を生み出していく楽しさは格別だ。  

 これまで、自分にマッチするRAW現像ソフトとの出合いがなかったとすれば、Luminar AIの「体験版」を一度使ってみてほしい。そしてRAW現像をしたことがないという方にも、ぜひ「体験版」を操作して欲しいと思う。もしかするとLuminar AIとの出合いが、貴方の写真ライフを変えるきっかけになるかもしれないのだ。

萩原史郎

萩原史郎(はぎはら・しろう)

1959年山梨県生まれ 猪年 蟹座。東京都在住の風景写真家。写真誌「風景写真《の創刊、発行人、編集長を経験。写真誌寄稿、コンテスト審査員、写真教室講師、講演会講師、写真クラブ例会指導など幅広く行う。日本風景写真家協会(JSPA)副会長、日本風景写真協会(JNP)指導会員、日本学生写真部連盟(FUPC)指導会員など。

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