私にとってのRAW現像

 

【解説、作品:山口規子】

RAW現像で、その場の空気感や自分の感動を忠実に表現する

LuminarAIはその名の通り、人工知能(AI)が搭載されている現像ソフトです。便利ですが、AIに任せるのが不安な方も多いはず。かくゆう私もその一人でした。しかし、使ってみると意外と繊細な知能な御方(笑)で、私との相性もぴったり。かゆいところまで手が届くソフトでした。

【画像1】

(RAW現像前)

(RAW現像後)女性の肌の質感や工房の空気感が思い通りに表現できました。

1) テンプレート

既存のテンプレートなんて!と思っていたら、開けてびっくり。なんという種類の多さ。それもネーミングがユニークで、すべてをクリックし、画像の変化が楽しくなって、いつのまにかニコニコ笑ってしまう私でした。では早速、イタリアのサルデーニャ島の草木染め職人のフェデリーカさんをRAW現像してみました。ヨーロッパの女性を撮る時に気にしていることは、肌の色やツヤ、そして髪の毛の色です。彼女の髪もなんとも表現しがたい色だったので、脳裏に焼き付けた色を思い出しながら、現像スタート。
その人工知能を試すために、「テンプレート」から使ってみました。「テンプレート」内の「ポートレート」を選び、またその中から「本質」へ、そして「広告塔」を選ぶと、一気にいきいきとしたフェデリーカさんが浮かび上がりました。

2) ビネット

しかしそれだけでは、工房と彼女の存在のバランスが悪かったので、彼女をほんの少し引き立てるために 「編集」から「ビネット」を使って、周辺部の光を暗く落としました。ビネットを使うときは、どのくらいの範囲を確かめるために、初めに適応量を極端な値にして、範囲を決め、その後に適応量をマイナス方向(明るくしたい場合はプラス方向)にもっていきます。すると、より一層、彼女が工房の雰囲気に包み込まれるような雰囲気が蘇り、そのままフィニッシュして、出来上がり。

 


【画像2】

(RAW現像前)

(RAW現像後)顔を引き立たせながらも、光の温かさや土の細部にわたる質感が表現できました。

3) ライト

同じく、サルデーニャ島の貯金箱職人のアントニオさんをRAW現像してみました。今回は「テンプレート」は使わず、すぐ「編集」から入ります。記憶を頼りに「ライト」から光の暖かみを調節します。この工房は窓から光が差し込み、赤レンガの色をひろって、工房全体が暖かい色の光に包まれていました。それを表現すべく、「暖かみ」をアップ。

4) 詳細

次に「詳細」から「細部のディテール」を使い、ろくろの上の土の質感にこだわります。画像全体のバランスを見ながら、ほんの少しアップすると、土の上にある細かい線(すじ)が少し強調されるのがわかります。

(細部ディテール0)

(細部ディテール40)

5) フェイスライト

最後に、彼の下向きの顔を少し強調したく「フェイスライト」を使います。画像内の空気感を壊さない程度に使うようにし、「フェイスライト」をアップすると、顔の部分だけ明るくなります。最後に画像全体を見渡し、本物に近づけたかどうかチェックして出来上がりです。

6) まとめ

Luminar AIは、一言でいうと、とても楽しい現像ソフトです。ネーミングが楽しい。例えば、「テンプレート」の「アーバンスタイル」に入ると「トロント」とか「メルボルン」とか「ニューヨーク」などの機能があって、まさに「そうそう、これがニューヨークだよね!」って納得できるテンプレートなのです。そして、一人でもくもくと現像するときや、疲れた自分が間違った方向へ行きそうなときに、「ちょっと待った!こっちの機能の方がいいんじゃない?」と導かれる感じも好き。このソフトのおかげで、私の睡眠時間は長くなり、今では頼れる相棒のような存在です。

 

山口 規子

山口 規子(やまぐち・のりこ)

栃木県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、文藝春秋写真部を経て独立。女性誌や旅行誌を中心に活動。著書に旅と写真の楽しみ方を綴った『トルタビ〜旅して撮って恋をして♫〜』や、柳行李職人を撮り続けた写真集『柳行李』など。旅好き、猫好き、チョコレート好き。公益社団法人 日本写真家協会理事。

 

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