2019年度 フォトコン・スクール 初級コース ネイチャーの部 選評:石井秀俊

第1位     
北野真弓(大阪/フォトクラブめだか)

「紅ひらり」10月号銀賞

黄色く輝く背景がやわらかなS字を描き、そこにモミジがひらひらと舞う、絵に描いたような美しさです。北野さんは、クモの巣にかかったモミジを素敵に見せる背 景のイメージをしっかりと組み立てています。ぼかしの表現は、レンズワークだけで なく明暗差によっても変化するので、明暗差が小さい同系色を選ぶと優しいボケを表現できますね。

 

 

 

 

第2位     
前田昭人(兵庫)

「霧中に仰ぐ」2月号銀賞

霧が美しいグラデーションを生み出し、そこに物語を感じるシカの姿をとらえているのが素敵です。紅葉した木に優しさを感じる霧、そして控えめに配置したシカと、それぞれに役割を持たせた無駄のない構図ですね。 ホワイトバランスをアンバーにして雰囲気を演出しているでも、前田さんの力量を感じます。

 

 

 

 

 

第3位     
May(愛知/キヤノンフォトクラブDEXT名古屋)

「ちいさな大冒険」3月号銀賞

優しい雰囲気の空間をアリが冒険する、童話の1ページのような作品ですね。こうした作品を制作するには、事前にしっかりとしたイメー ジを持っておく必要があります。また、計算された背景や 立体感のあるぼかしの構成といった技術の高さと、ハイキー調でも白飛びさせない仕上げの調整力も抜群です。

 

 

 

第4位     
加藤みちよ(北海道/北海道写真協会,写真集団洞爺)

「薄氷の朝」5月号銅賞

水面に薄氷が張り、そこに 映り込んだ景色が美しいです。美しい映り込みをとらえるのに大切なのは、水面が日陰で、映り込む景色に日差しが当たっていることです。 加えて、空に雲がなければ、青空の色が日陰を青く表現し、より幻想的な雰囲気となります。加藤さんはこれらの要素を満たす良い状況を見つけましたね。

 

 

 

第5位     
本間 泉(新潟/風景写真撮影研究会「かくだ山」)

「秋」4月号銀賞

水しぶきが描き出す光の芸術は、まさに秋のお告げ……。真っ赤なモミジが控えめなぶん印象強く感じられる、詩のような情景の作品です。モミジが浮かぶ波の映り込みも静かで、この作品の雰囲気をより強めています。虹と川の流れが合う時間帯を見極めた点と、露出をマイナスへ補正することで色が強調された点も見逃せません。