1月号 「夜明けの煌き」赤間和夫(栃木)

1月号「夜明けの煌き」赤間和夫(栃木)

【選評】可愛らしいイナゴを主役にして、朝露の輝きを美しい玉ボケで表現することで、ファンタジーな作品に仕上げています。イナゴと大きい玉ボケ、小さい玉ボケの配置もバランスが良く奥行きが感じられ、丁寧に撮影されたことが伝わりますね。プリント仕上げも美しく、全ての点で文句のつけ所がない素晴らしい作品です。

8月下旬、実り始めた稲田の光きらめく夜明け。季節と光が感じられるように撮影しました。
ニコンDf・タムロンAF180ミリマクロ・F5.6オート・ISO400・キヤノンPIXUS XK70・キヤノン写真用紙光沢プロ/栃木市・8月下旬,6:00頃

 

 

 

2月号 「幾何学模様」平尾民子(愛知/寺子屋写真クラブ,豊寿会写真サークル)

2月号「幾何学模様」平尾民子(愛知)

【選評】シダなどの草木の映り込みをシンメトリーになるようフレーミングした作品です。こうした映り込みの作品は最近多く見ますが、その中でも際立った印象ですね。一見すると天地の見分けがつかないくらいピタっと止まった静寂な風景と、草木のわずかな色づき具合による秋の季節感が表現できています。まるで万華鏡のような世界に引き込まれました。

色づいたシダや草木が水鏡になって、幾何学模様を形成しているように見えました。
キヤノンEOS6D・タムロンAF28~300ミリ・PL・F11・1/250秒・ISO800・キヤノンPIXUS PRO-100・富士フイルム「画彩」プロ/福島県檜枝岐村・9月下旬,15:00頃

 

 

 

3月号 「ゲット」大坪 満(千葉/フォト・スリー柏かわせみの会)

3月号「ゲット」大坪 満(千葉)

【選評】カワセミがちょうど魚を捕らえた瞬間を逃さず、適切なシャッター速度で撮影していますね。柳とカワセミによる構図のバランスが良いだけでなく、浅黄色の柳の雄花を合わせて写すことで、春の季節感を加えているのも良かったです。さらに、魚が跳ねた水しぶきも写っていることで、臨場感も伝わってくる作品になっています。

満開に咲いた柳の枝に、魚をくわえたカワセミが止まっていたので夢中で撮影しました。
キヤノンEOS7D MarkⅡ・タムロンAF150~600ミリ・F8・1/1250秒・ISO500・三脚・エプソンSC-PX5VⅡ・ピクトリコフォトペーパー/柏市・3月下旬,10:00頃

 

 

 

4月号 「昇る」久保博美(神奈川/辻堂デジタルフォトクラブ)

4月号「昇る」久保博美(神奈川)

【選評】輝く虫がアリだと一目でわかり、印象に残った作品です。黒い背景を利用して夕方の光を表現し、スリット状に輝くセンダングサの茎とアリの姿を描いています。被写体が輝く絶妙なアングルを探し当て、動き回るアリをバランスよく画面に構成することで、印象的に仕上げていますね。久保さん独自のセンスと、諦めず撮影に挑む姿勢が功を奏し、金賞という結果に繋がったのでしょう。

夕日に照らされたセンダングサの茎に、せわしなく行き来するアリを見つけたので撮影しました。
ソニーα7RⅣ・FE100~400ミリ・F5.6・1/1000秒・ISO250・エプソンSC-PX5VⅡ・エプソン写真用紙絹目調/茅ヶ崎市・10月中旬,17:00頃

 

 

 

5月号 「トンボ池」髙橋和夫(長野/幻影会)

5月号「トンボ池」髙橋和夫(長野)

【選評】夏に黄色い花を咲かせるコウホネの葉に止まったアオハダトンボをとらえた作品です。光の状態が良いので、翅の色が青くキラキラと輝いており、とても美しいですね。そして一番の魅力は、葉に映るトンボの影。青みを帯びた色が印象的なだけでなく、高速シャッターで水面に映り込んだ青空との組み合わせによって、動きも感じられます。髙橋さんの着眼点と技術力、そして高い表現力が素晴らしいと感じました。

ここは通称「トンボ池」。コウホネの葉に止まるアオハダトンボと、葉に映る影を意識してシャッターを切りました。
キヤノンEOS7D MarkⅡ・EF100~400ミリ・F7.1・1/400秒・ISO400・エプソンSCPX5VⅡ・富士フイルム「画彩」プロ/塩尻市・6月下旬,15:00頃

 

 

 

6月号 「風のいたずら」植竹ヒロ子(千葉/むらさきフォトクラブ)

6月号「風のいたずら」植竹ヒロ子(千葉)

【選評】成長中の青々とした麦が、雨風によってなぎ倒された様子を造形的にとらえた作品です。農家の方にとっては、大切に育ててきた麦が被害に遭った悲しい光景ですが、写真的には放射状に倒れた麦の造形がとても美しいです。超広角レンズを使ったことで、手前から奥へ倒れた麦の流れを感じ、巻くような風の通り道がしっかりと描かれています。雨上がりもしくは朝露でしょうか、穂が濡れている部分からみずみずしい生命力も感じました。

たわわに実った麦の穂が雨風で倒されているのを、広角で画面いっぱいに撮影しました。
キヤノンEOS5D MarkⅡ・EF16~35ミリ・PL・F22・1/10秒・ISO400・三脚・エプソンEP-10VA・エプソン写真用紙クリスピア/小山市・5月中旬,7:00頃

 

 

 

7月号 「雨上がりの朝」小池幸夫(長野/自然奏フォト)

7月号「雨上がりの朝」小池幸夫(長野)

【選評】昨年の春は全国で緊急事態宣言が発令され、外出自粛によりお花見が困難でした。今年は感染対策をしながら、多くの人が楽しみにしていたことでしょう。この作品は、桜の開花を祝福するかのようにやわらかい光が差し込み、空に二重の虹が描かれています。また、画面右に桜を置き、左から右にかかる虹を配したフレーミングもバランスが良いですね。気象条件を味方につけた素敵な作品です。

C-PLフィルターを使用して生じた色の濁りを、RAW現像ソフトを使って軽減しました。
ペンタックスK-1 MarkⅡ・D FA24~70ミリ・C-PL・F13・1/25秒・ISO400・三脚・エプソンSC-PX1V・エプソン写真用紙絹目調/駒ヶ根市・4月中旬,5:30頃

 

 

 

8月号 「小沼の秋」植松 晃(山形/アズマクラブ)

8月号「小沼の秋」植松 晃(山形)

【選評】湖面に浮かぶ植物が、まるで苔盆栽のオブジェのようです。主役の植物は日陰にあり、背景に輝く対岸の映り込みをとらえている点が魅力的ですね。画になる主役を見つけても、背景には美しいシチュエーションがなかったりするものですが、この作品では紅葉の見事な彩りによって、主役を際立たせることができました。湖面に揺らぎがあることで動感もプラスされ、水彩画のような色づかいが印象的な、いつまでも眺めていたい作品です。

夕日に映える湖面の紅葉の中に、ポイントとして緑の木株を入れてみました。 ペンタックスK-1 MarkⅡ・D FA70~200ミリ・C-PL・F10・1/6秒・ISO100・三脚・エプソンSC-PX1V・ピクトリコセミグロスペーパー/福島県北塩原村・10月下旬,16:00頃

 

 

 

9月号 「怒濤」横山 孝(福島/フォト倶楽部 遊人)

9月号「怒濤」横山 孝(福島)

【選評】手前から波、岩礁、波、鳥居、波しぶきとバランスよく連なり、遠近感が感じられる構図に仕上がっています。打ち寄せる白い波から荒れ狂う海の様子が想像でき、鳥居を越えた波しぶきにも迫力がありますね。大きな波は10~20回に1回程度だと思いますが、タイミングよくシャッターを切っています。高速シャッターで撮影したことで、しぶきの粒や波の泡もしっかりと描写され、臨場感も伝わりました。

荒れ狂う大波の躍動感を出すため、高速シャッターでしぶきを止めて撮影しました。
ソニーα9・FE100~400ミリ・PL・F8・1/12800秒・ISO1600・三脚・エプソンSC-P5050V・MAXIMプレミアム写真用紙/いわき市・10月中旬,14:00頃

 

 

 

10月号 「羽化」髙橋和夫(長野/眩影会)

10月号「羽化」髙橋和夫(長野)

【選評】トンボの羽化の神秘的なシーンをとらえた作品です。殻から出たあとに葉をつかみ、羽を広げて乾くまで動かない数時間を撮影することに成功しています。昆虫図鑑にあるような羽化のシーンにとどまらず、画面構成や背景もシンプルに整理。特に背景が全体的に暗く落ち、揺らぎの反射がキラキラとアクセントになっています。日ごろからトンボをよく観察し、特性を理解した上での渾身の一枚です。

トンボの羽化をねらいました。背景選びのため、何度も立ち位置を変えながらシャッターを切りました。
キヤノンEOS7D MarkⅡ・EF100~400ミリ・F8・1/500秒・ISO2000・エプソンSCPX5VⅡ・富士フイルム「画彩」プロ/塩尻市・6月下旬,15:00頃

 

 

 

11月号 「黄金のドレスを纏って」竹﨑雅丹(兵庫)

11月号「黄金のドレスを纏って」竹﨑雅丹(兵庫)

【選評】荒々しい巨大な柱状節理が織りなす東尋坊は勇壮です。近年は落石の危険から撮影スポットが限られていますが、夕日に染まる特長的な扇状の岩肌を見つけられましたね。超広角レンズでダイナミックにとらえ、岩肌の立体感を鮮明に描写。水平線を入れずに岩肌と海だけでまとめることで、悠久の時の流れを感じる作品に仕上げています。

柱状節理の魅力を表現するため、斜光になるまで待ちました。夕日が岸壁の質感を引き出し、さらに黄金の衣装を纏わせてくれました。
ニコンD600・AFニッコール14~24ミリ・F8・1/125 秒・ISO125・三脚・エプソンPX-7V・ピクトリコフォトペーパー/坂井市・7月下旬,18:00頃

 

 

 

12月号 「海ホタルの輝き」毛利素子(岡山/写友四季)

12月号「海ホタルの輝き」毛利素子(岡山)

【選評】ウミホタルのブルーの光跡を、長時間露光によって描いた作品です。ウミホタルは夜になると砂から這い出て、捕食のために体内から分泌液を放出し、海中の酸素と化学反応を起こすことで光を放ちます。主役の光跡を画面に大きくとらえ、街明かりの反射と星空をのぞかせたフレーミングもバランスがよいですね。綿密なリサーチに加え、気象条件に恵まれたことで神秘的な作品に仕上げることができました。

ウミホタルが写る場所を考えて、画角を決めることに一番気を遣いました。海の銀河のようだと思いました。
キヤノンEOS5D MarkⅢ・EF16~35ミリ・F4・8秒・ISO1600・三脚・キヤノンPIXUS PRO-100・富士フイルム「画彩」プロ/瀬戸内市・8月下旬,20:00頃