1月号 「田舎の楽園」村上 勲(栃木/矢板フォトクラブ)

1月号「田舎の楽園」村上 勲(栃木/矢板フォトクラブ)

【選評】やっぱり地元の人しか知らないような場所なんですね、鳥のさえずりしか聞こえないような静かなところなのでしょう。あたかもここに座ってこの景色を眺めているような錯覚に陥ります。見栄えするようなフジの木ではないのに、植えられたばかりの苗の導きによって立派なフジに生まれ変わりました、被写体に頼るのではなく、構図力で平凡な被写体を見栄えする被写体に変えたところを評価しました。

自宅から20分の散策コース。フジの花を小さく縦位置で入れ、田舎化の雰囲気を考えていたところ、猫が来て最高の瞬間となりました。
富士フイルムX20・フジノン7.1~28.4ミリ・F11オート・ISO400/矢板市・5月上旬,7:00頃

 

 

 

2月号 「暮れる頃」堀川 宏(熊本/フォト熊彩)

2月号「暮れる頃」堀川 宏(熊本/フォト熊彩)

【選評】舞い降りるたくさんのサギのシルエットと沈みゆく太陽との組み合わせが素晴らしい作品です。スケールが大きく、アフリカのサバンナなどの海外で撮影したのではないかと連想してしまうほどです。太陽を樹冠ギリギリの位置で撮影したのが絶妙です。このような撮影は太陽の動きに合わせたポジションの選択が必要で、その土地を熟知していなければ撮影できません。日々の探究をされているのだろうと感じます。 

塒に帰ってくるサギたちを夕日と絡ませてみました。ファインダーの眩しさを落とすためNDフィルターを使用しました。
ペンタックスK-1・D FA150~450ミリ・ND8・F11・1/2000秒・ISO100・三脚・富士フイルム「画彩」プロ/菊池市・10月上旬,18:00頃

 

 

 

3月号 「春夜の共演」長谷由美(愛媛/Photo愛)

3月号「春夜の共演」長谷由美(愛媛/Photo愛)

【選評】弧を描く北天の星空、そして水面に映り込むシダレザクラが見事です。ブルートーンの星空にLEDライトで桜をうっすらと浮かび上がらせることで、妖艶な雰囲気となりました。朝焼け色のワンポイントも効果的です。ホワイトバランスや撮影開始・終了時刻の選択によって仕上がりが大きく変わるシーンですが、完成した作品イメージをしっかりと持ちつつ、桜咲く夜を的確な表現技術でとらえています。  

美しく咲き誇るシダレザクラと満天の星空。静寂な時間を表現しました。
ニコンD850・AFニッコール16~35ミリ・F4・25秒(比較明合成)・LEDライト・ISO400・三脚・エプソンSC-PX5VⅡ・松本洋紙店絹目調/愛媛県内子町・4月上旬,4:00頃

 

 

 

4月号 「競走」亀井秀樹(広島/フォトクラブ「ミスト」)

4月号「競走」亀井秀樹(広島/フォトクラブ「ミスト」)

【選評】ハクチョウ撮影の経験者なら一度は飛び立ちのシーンに挑戦してみたことがあるのではないでしょうか。しかし、いざ撮影してみるとその難しさに気がつくはずです。スピード感、カメラの水平移動、光の選び方、目にブレがないことなど流し撮りの必須要素がすべて完璧でないと作品としては完成しないからです。しかし、この作品はすべての要素をクリアーしています。なかなかこれほどの流し撮り作品には出会えません。 

遅いシャッター速度で、水上を走るスピードと綺麗な水飛沫を表現しました。
キヤノンEOS-1DX MarkⅡ・EF100~400ミリ・1/30秒オート(F18)・ISO50/安来市・12月上旬,9:00頃

 

 

 

5月号 「我先に」嵯峨勘左ヱ門(静岡/キヤノンフォトクラブ静岡)

5月号「我先に」嵯峨勘左ヱ門(静岡/キヤノンフォトクラブ静岡)

【選評】目標に向かって走り出そうとしている瞬間の迫力とサルたちの気迫がビシビシと伝わってきます。三匹のサルが重なっているタイミングも我先にと競っている必死さを感じさせますね。雨が降っている中の弱い光ながら、逆光でレンズを向けているので雨もしっかり描写され天候の雰囲気も出ていますし、輪郭の強調、背景の反射による変化などこの光線状態を完璧に生かしていると思います。

ケンカをはじめた野生の若いオス猿。緊張感とスピード感を出すため斜めに傾けました。ラフモノクロでマットな用紙にプリントしています。
キヤノンEOS70D・EF70~200ミリ・F6.3・1/400秒・ISO1250・キヤノンPIXUS PRO-100・キヤノン写真用紙プレミアムマット/静岡県南伊豆町・10月中旬,11:00頃

 

 

 

6月号 「朝陽燃ゆ」青木幸子(埼玉)

6月号「朝陽燃ゆ」青木幸子(埼玉)

【選評】岸壁を一直線に流れ落ちる滝のライン、それを縁取るような氷の造形が見事です。シンプルな画面構成により滝の存在感が生き、厳かさが醸し出されています。一方、背後の木々が朝日に染まり、青と赤の対比が生きて、目覚めの朝らしい雰囲気が伝わってきます。ただタイトルにある朝陽の印象は弱く、氷瀑が主役のように感じます。

朝陽が差しこみ、刻々と変わる情景にシャッタースピードを配慮しました。
ニコンD850・AFニッコール14~24ミリ・F16・2秒・ストロボ・ISO100・三脚/群馬県南牧村・1月中旬,7:00頃

 

 

 

7月号 「暮れる頃」堀川 宏(熊本/フォト熊彩)

7月号「暮れる頃」堀川 宏(熊本/フォト熊彩)

【選評】今回の審査で一番に目に留まった作品です。天候、桜の開花度、夕日の位置、鳥の飛ぶ位置とその方向、全てが完璧です。おそらくは夕日の沈む位置と小さな山の重なりまで計算されているのでしょう。桜の夕景写真は数多存在しますが、生き物が写し込まれた桜の写真でこれほど完成度の高いものはほとんど見たことがありません。気持ちの高揚を覚えました。

近所の小高い山の中腹から柔らかい夕陽が差す中、カラスがこの位置を通るのを待ってシャッターを切りました。
ペンタックスK-1・D FA24~70ミリ・C-PL・F11・1/250秒・ISO400・エプソンPX-G5000・富士フイルム「画彩」プロ・三脚/山鹿市・3月下旬,17:00頃

 

 

 

8月号 「杏の香る頃」北村修一(香川/日本リアリズム写真集団,光画塾)

8月号「杏の香る頃」北村修一(香川/日本リアリズム写真集団,光画塾)

【選評】まるで絵画のようで、惚れ惚れしてしまう作品です。木々の間を飛び交うメジロを見かけることはありますが、レンズを向けたとしても木に止まった瞬間を狙うのが一般的。飛んでいる一瞬を狙おうという思考もさることながら、それを形にしているのが素晴らしいですね。しかも、梅の時期は背景が地味になりやすいですが、春らしい明るい背景なのもいいですね。推薦、おめでとうございます。

杏の木のあたりにメジロが飛んでいるのを見つけ無我夢中で撮影しました。
オリンパスOM-D E-M1 MarkⅡ・Mズイコーデジタル300ミリ・F4・1/2000秒・ISO1250・富士フイルム「画彩」プロ・キヤノンPIXUS Pro9000 MarkⅡ・キヤノン写真用紙光沢プロ/高松市・3月上旬,9:00頃

 

 

 

9月号 「星降る大地」芝﨑静雄(愛媛/Photo愛)

9月号「星降る大地」芝﨑静雄(愛媛/Photo愛)

【選評】カルスト台地と共にはくちょう座付近の天の川をくっきりととらえた完成度の高い星景写真です。街明かりが少ない好条件もありますが、クリアな天候、そして夏の天の川が沈み行くタイミングを選ぶことが素晴らしい作品に繋がりました。散光星雲を強調するためと思われますが、夜空の赤味がやや強いように感じます。

四国カルスト台地の満天の星・天の川を一本の木の真上に配し、夜明け前に撮影しました。
キヤノンEOS6D MarkⅡ・シグマAF20ミリ・F2・9秒・ISO6400・エプソンPX-7V・松本洋紙店・三脚/愛媛県久万高原町・8月下旬,4:00頃

 

 

 

10月号 「太陽の前を翔る」菅 初雄(愛媛/写心,フォトリーブ)

10月号「太陽の前を翔る」菅 初雄(愛媛/写心,フォトリーブ)

【選評】日の出の太陽をフレームに収まりきらないほどアップにした構図の取り方が大胆でとても力強い作品です。さらに太陽が水平線から離れる寸前に鳥の群れが通過するという神がかり的な瞬間をとらえたことで作品の完成度はマックスになりました。鳥が通過することを前提にした露出もピッタリです。運も味方したとは思いますが、日頃からこの作品を撮ろうと狙いを定めていないと撮影できない一コマだと思います。

日の出を撮影中、太陽の前を並んだ鳥が横切ったところを高速シャッターで連写しました。
ソニーα7RⅣ・FE200~600ミリ・F16・1/1000秒・ISO3200・エプソンSC-PX3V・コクヨ写真用紙・三脚/西条市・6月下旬,5:00頃

 

 

 

11月号 「異次元」三浦照生(福島/日本風景写真協会,フォト四樹)

11月号「異次元」三浦照生(福島/日本風景写真協会,フォト四樹)

【選評】場所はおろか被写体がなんなのかということを説明しようとせず、この情景を前に感じた気持ちをそのまま仕上げているから、作品から伝わる、感じるメッセージが強くなるんですね。宇宙旅行ができるようになったとき、遠くの凍りついた星の表面ってこんなふうに見えるんでしょうね。息をのむ美しさです。

凍結した用水池に午後の木漏れ陽が射し込む、 異次元空間の様相を撮りました。
富士フイルムX-H1・XF18~135ミリ・F16・1/125 秒・ISO640/二本松市・1月下旬,14:00頃

 

 

 

12月号 「水面に画く」菅 初雄(愛媛/与心フォトリーブ)

12月号「水面に画く」菅 初雄(愛媛/与心フォトリーブ)

【選評】緑色のグラデーションが心に響いてくる、落ち着いた雰囲気が魅力です。森に光が差し込み、広葉樹と針葉樹の濃淡により、適度なメリハリが生まれました。淡い緑色が浮かび上がる光、さらに水面への映り込みによる揺らぎの効果も加わることで臨場感が増ました。いつまでも見ていたい気持ちにさせてくれる作品です。

映り込みを狙う時は順光と無風が最大の条件になるため、何度もチャレンジして撮影しました。
ソニーα7R Ⅳ・シグマAF24~70ミリ・PL・F5オート(+0.3補正・1/100秒)・ISO500・エプソンSC-PX3V・コクヨ写真用紙光沢・三脚/西条市・3月下旬,9:00頃