1月号「夏の少女」市川功子(三重)

1月号「夏の少女」市川功子(三重)
【選評】来たる2024年の一年、縁起の良いことが起こるような写真を選ばせてもらいました。作品の選評の際にはいつもいいますが、子供の笑顔には勝てません! 天真爛漫で躍動感のあるこの作品に胸を打たれました。昔ながらの町の情景とパッと咲いた花、夏らしいさまざまな情報が伝わってきます。どこか故郷を思わせる一枚です。(山岸 伸)
2月号「思い出アルバム」嵯峨勘左衛門(静岡)

2月号「思い出アルバム」嵯峨勘左衛門(静岡)
【選評】家族で記念撮影をする直前、お母さんが、お兄ちゃんに「早くこっちにきて。写真撮るよ」と呼びかげる言葉さえも聞こえてきそうな臨場感のある作品です。彼岸花を手前にぽかし、タ暮れに差し掛かる柔らかな光を作者自身も美しいと感じた気持ちが覗えます。優しい光に包まれた何気ない瞬間、写真の醍醐味ともいえる素晴らしい一枚です。(山口規子)
3月号「共生」小池富子(静岡)

3月号「共生」小池富子(静岡)
【選評】階調豊かなモノクロプリントの美しさに目を奪われました。色がないことでフォルムや質感が際立ち、カバに群がる複数の魚たちとのサイズ感の対比も表れ、何より共生する生き物たちの党大さが感じられる優しさとスケールの大きいテーマが潜んでいる素晴らしい作品です。相互関係を築く。私たち人間 もこうありたいものです。(鶴巻育子)
4月号「瞳」島尻るりこ(愛知)

4月号「瞳」島尻るりこ(愛知)
【選評】遊具から覗く小さな子どもの顔。ただそれだけの瞬間をとらえた写真ですが無駄なスペスがなく、うったえてくるものがドンとストレートに伝わってきます。この少し横に目線をやる子ども。これがまっすぐカメラを見つめていたならばつまらなかったはず。「目線」のパワーがどれほど強いかということがこの一枚からわかります。作者はきっと子どもとのコミュニケーションが上手なのでしょう。いい「目線」をひきだすことに誠興しています。インパクトを考えて撮られている作品です。(山岸 伸)
5月号「砂丘の少女」山崎秀司(兵庫)

5月号「砂丘の少女」山崎秀司(兵庫)
【選評】被写体である少女のなんとも言えないこの表情がいいです。風が吹いた瞬間とこの表情を同時にとらえた作者の日ごろからの撮影力も伺えます。砂丘を縦位置にすることにより奥行き感が出て、その奥行きが少女の未来の長さと比例するようにも感じます。大人のように妖艶な表情が大人への憧憬としても感じることができ、少女の気持ちを垣間見るような素晴らしい作品です。(山口規子)
6月号「準備中」安藤正一(高知)

6月号「準備中」安藤正一(高知)
【選評】画面内の所々に、しかも屋形船の中にも傘が確認でき、雨天に開催するイベントの苦労が想像できます。棒を掴みながら恐る恐る頼りない桟橋を渡る親族らしき男性の姿にはヒヤヒヤとさせられますね。霧がかった山は寒々とした空気を醸し出しており、濡れた紅白の垂れ幕がかえって切なく見えてきます。ハレの日は好天に恵まれたいものですが、時が経つと悪天候のほうがかえって記臆に残るものです。そんな大切な瞬問をとらえたこの1枚は素敵な思い出となるでしょう。(鶴巻育子)
7月号「ダイビング」三木雅也(香川)

7月号「ダイビング」三木雅也(香川)
【選評】今回も2400枚以上の作品が応募される中、特にこの1枚が目に焼きついて離れませんでした。写真はいかに第一印象が大切であるかがわかると思います。写真は瞬時に撮れるからこそ、シャッターチンスが大事。絞りやポケ感、色味など写真を撮るときに気をつけなくてはいけないことはたくさんありますが、やはりシャッターチャンスを一番大事にした写真は評価したくなります。ダイビングの一瞬を見事にとらえた作品に心を打たれました。(山岸 伸)
8月号「生きる」皆川春奈(愛媛)

8月号「生きる」皆川春奈(愛媛)
【選評】なんとも言えないこの猫の表情がいいです。猫なのに猫じゃない、人間のような表情に目を奪われました。蜘蛛の巣を片目に付けて、まるでどこかで戦ってきた後のよう。また画面周辺部分を暗く落とし、黒猫の周りには白い背景を置くなど構図も絶妙です。舌を出した瞬間を逃さずとらえ、睨んでいるような表情はどこか笑っているようにも見えます。野良猫の「生きる」力強さを感じました。(山口規子)
9月号「hungry」松野啓司(静岡)

9月号「hungry」松野啓司(静岡)
【選評】迫力とファンタジーを感じる不思議な作品。くすんだ色味が、鑑賞者を現実から遠ざかるきっかけとなり不思議な気持ちにさせられます。自由に泳ぐペリカンの配置も絶妙で、一匹だけ顔が見え大きな口を開けている瞬間というタイミングの良さが素晴らしいです。黄色味と耀きある用紙で水の青味を引き立てプリントが美しく、堂々と「作品」と呼べるレベルです。(鶴巻育子)
10月号「お手伝い」島尻るりこ(愛知)

10月号「お手伝い」島尻るりこ(愛知)
【選評】必死にお手伝いしている様子が眼差しや手つきから感じられます。またレンズについた水滴の丸いポケが暗部に重なり、いいアクセントです。子ども写真としては暗めであり、もっと派手な写真を推薦にすべきかもしれませんが、この子はこの先どうなっていくのだろうという内面にまで思いを馳せることができる内容がある写真であり、私の最後の審査における推薦としました。(山岸 伸)
11月号「盆供養の日」西原博子(愛知)

11月号「盆供養の日」西原博子(愛知)
【選評】この作品はびっくりするほどの偶然が重なり合ってできています。人々の位置の絶妙なバランスや視線の方向、雲の形、すべてがこの一瞬に凝縮されており、この瞬間を切り撮った作者の写真判断力を感じます。また盆供養の日で、人々が喪服、つまり黒服を着ている点もこの作品の面白さを強調しています。不思議な瞬間をとらえた素晴らしい作品です。(山口規子)
12月号「夏の記憶」横江正幸(滋賀)

12月号「夏の記憶」横江正幸(滋賀)
【選評】メルヘンチックな色合いと手元のシルエットが藤城清治さんの影絵を思い出しました。スマホは現実味を与えがちですが、画面の中と背景の花火が同化し不思議な印象に。また手に花火の粒が重なったり、煙で緑が滲んだ空のグラデーションなど幻想的な要素が散りばめてあり、現実と非現実を行ったり来たりできる自由さが魅力でした。(鶴巻育子)