第1位 辻 慶二(高知)

12月号 特選「鰹の國」
【選評】これまで個性的なアート性の高い作品を発表されていた辻さんの今年最後の作品は、ドキュメンタリー性の高いストレートなものでした。主役である鰹がいかに街中や人の生活に溶け込んでいるのかを、多様な視点で見つけてまとめています。一見すると何気ない写真が多くインパクトはそれほど強くはないのですが、なぜかとても心地よく見えるのはベテランならではの組み方のうまさがあるからでしょうね。また“地元だからこそ”のハイレベルな被写体選びや場所選びもさすがです。それぞれの写真の光の選び方を見ても、よく考えられていますからね!
第2位 松島眞知子(静岡)

3月号 特選「歪む西日」
【選評】タイトルにある“西日”を、朱色を印象的に使いながらまとめた作品です。色の表現は組写真では取り入れやすい要素でもあるので、多くの人に用いられる手法ですが、だからこそ審査でも激戦枠のひとつとも言えます。今回の松島さんの作品はほぼすべての写真で同じような色になっています。ただし、どれも全部違った表現になっている、この“そろっているけれど違う”というまとまりにできているのは作者のセレクトのうまさでしょう。②の車が赤以外ならダメだと思うし、車がないカットでもおそらくダメだったでしょう。もうひとつ、タイトルの“歪む”に対する表現のうまさもなかなかのものです。よく見ると三枚ともそれぞれしっかり歪んでいます。
第3位 山本芳子(高知)

7月号 特選「天空」
【選評】高層ビル&空、と言ってもいろいろな見せ方や撮り方があるんですね。バリエーションの豊富さが作品の出来と正比例している見応えのある作品です。変化をつけるほど、組むときには繋がりにくくなる部分も多少出てくるものですが、この作品では変化がありつつ組写真としてしっかりまとまっています。そう思えるのは青色をポイントにしているからではないでしょうか。①〜③は強めに、④は隠し味のように、緩急つけながら青色を出しているのも巧みです。またビルの中という限られた場所ゆえに、枚数が多くなると単調になりがちですが、③でわざと水平を傾けるという大胆さも見逃せません。