第1位 青木幸子(埼玉)

8月号 特選「幽玄」

【選評】散りゆく桜の姿を儚くも美しく表現した素敵な作品です。水面に花びらが落ち、キラキラと輝いています。花の脈が水に溶け、まるで鳥の羽のようにも見えます。日中のトップ光を巧みに操りながら、やがて朽ちていく時の経過と終焉の美をとらえています。画面左上の暗い部分は避けて、被写体が近ければマクロレンズ、または接写リングを使うと、さらに完成度がアップするでしょう。(喜多規子)

第2位 市川清恵(神奈川)

10月号 特選「穏やかな朝」

【選評】山の頂から朝陽が顔を少し出し、その光が冬の湖面に流れたよい瞬間を撮っています。逆光のライティングながらも陰影が強くならず、色調やグラデーションの再現がとてもきれいで、うっとりと眺めてしまう魅力的な作品です。起伏のある雪原を手前に大きく入れ、遠方の山へと視線を流すフレーミングも上手です。早朝の澄んだ光と空気感を引き出したプリント仕上げもうまく、ピンと張り詰めたこの場の雰囲気を感じるよい描写です。(三輪 薫)

第3位 大熊正行(東京)

7月号 入選「彼方へ」

【選評】雨上がりなのか、枯れたハスの葉に水滴が残り、雲間から出始めた太陽の光を浴びて煌めくフォトジェニックな表情をとらえていますね。葉の中央の水たまりには太陽が映り込み、宇宙的な空間を感じさせてくれます。ここに飛んできた虫をシャッターチャンスよく撮っていて、静かな雰囲気が漂う中に、ちょっとした動感を引き出す面白い表現をしています。渋めの葉の色合いによって、水面に映り込んだ空や太陽の反射が活きて見えます。(三輪 薫)

第4位 村田一史(山梨)

11月号 入選「花火」

【選評】タンポポの綿毛についた朝露をマクロレンズでクローズアップすることで、肉眼では見ることができない世界を表現しています。マクロレンズは被写界深度がどうしても浅くなってしまいがちなところ、絞り込んだことで綿毛と水滴がとてもクリアに、玉ボケもキラキラと輝いて描写されています。身近な場所での被写体探しの眼とレンズワークによって、自分だけの絶景をとらえることに成功しました。(喜多規子)

第5位 高木善一(愛知)

4月号 特選「静寂の中の一羽」

【選評】月明かりで妖しげに浮かび上がった水没林が金属かガラス細工のようにも見える描写で、光の透明感をうまく引き出して撮っています。トップライトでありながらやや逆光気味のライティングによって、手前に流れた山の影や水没林の細い影を、縦位置の画面構成で見せたフレーミングも上手です。トーン再現もとてもよく、シャドウからハイライトまでをバランスよく引き出していることによって、この描写がより魅力的に見えると思います。(三輪 薫)