第1位 加藤郁代(徳島)

10月号「虫養い」
【選評】金色に染まった丘に立つ、少女でもなく大人でもない二人。お祭りの最中のようですが、そのもっと向こうを見ているようで、眼鏡や瞳の中の光が印象的です。タイトルの“虫養い”(腹ごしらえ)も、彼女たちの退しい雰囲気を端的に表していますね。光だけが詰まった画面は、これから何でも描ける可能性しかないということ。ご本人もおっしゃる独特の空気感は、こちらまで少し前向きな気持ちにさせてくれました。
第2位 松本美枝子(岡山)

3月号「向かい風」
【選評】面白そうな?(写真)映えスポット?のようですが、撮らされることなくストリートアートや傘を効果的に表現に取り入れています。吹きつける向かい風のなか、怪しげな視線を感じながらも笑って前進しているような彼女。どんよりと重い空や瞳とのコンドラストによって、溢れる10代のエネルギーが一層爽やかに逞しく感じられます。松本さんも一緒に楽しみながら撮影している雰囲気が良いですね。こちらまでパワーをもらえる作品です。
第3位 竹内喜代美(三重)

6月号「悩み」
【選評】動物園での作品は、ガラスや檻越しの対象に寂蓼感を強調させた表現も多く目にします。ですが竹内さんがとらえた二人の間には、やさしさを含んだ空気や悩み相談をしているようなユーモラスさが感じられました。またモノクロ仕上げの質感描写も魅力的です。少し汗ばんだ子どもの髪からは、駆けてきた姿が想像できたり、水中の白クマには発光しているような神々しさもあります。絵本の世界に誘われるようなシーンに、想像が膨らみました。
第4位 岡 美代子(岡山)

5月号「不思議!」
【選評】すこし丸みを感じる画面の中で、ノスタルジックな雰囲気や柔らかい表情にほっとしました。余白のほとんどないタイトな切り取りもよく、周囲の説明的な情報がないことで、映り込みから音を感じて楽しんだり、自由にこのシーンを広げたりすることができました。写真は一瞬の記録からはじまって、見る側が受けとったイメージや想いと化学反応しながら、さまざまな記憶に変化していく。そんな写真の醍醐味も感じながら拝見しました。
第5位 竹井晴彦(宮城)

10月号「桟敷席」
【選評】浜名湖畔のこの無人駅には、数年前から無数のユリカモメが飛来してくるようになったそうですね。飛び立つ鳥たちのブレ・ボケ加減に臨場感があって、騒がしい鳴き声や羽音が聞こえてきそうです。全体的に落ち着いた露出に、車内の女性たちの渋い表情も良く、映画のワンシーンを想像させます。