第1位 遠井信行 (東京)

8月号 特選 「やすらかに」

【選評】行屋川水辺公園の「灯ろう流し」でしょうか。多くの精霊流しをテーマにした作品を拝見してきましたが、この作品はその中でも特に幻想的で完成度の高い組写真だと感じました。①の蠟燭の光で照らされて表情が少し緊張ぎみな子どもたちのカットで始まり、②の川面に近い低い位置からの撮影も効果的。③では画面対角線上の映り込みの灯りと長秒露光で揺れ流れる灯ろうが作品にほのかなリズムを与え、最後の④では水面に反射したブルー系などさまざまな灯りをボカしてとらえ、まるで彼の 世の光のごとく美しく、暗闇の中で撮影する人物 のわずかに見える表情やカメラのモニターなども アクセントになって、組写真の物語に強い余韻を 残すことに成功しています。構図と露出のコント ロールやレンズワークなど多様なテクニックを駆 使することで、精霊流しの厳かな時間の流れが 見事に表現された作品となっています。

第2位 髙木博規 (愛知)

7月号 特選 「Sky High!」

【選評】髙木さんの作風は、モノクロームで綴られる少し湿っぽい恋の物語というイメージが何となくあり、前号で新たな秘められた恋の物語が始まって、今月の審査では続きが拝見できると当方が 勝手に楽しみにしていましたが、今月は何とも爽快感あふれる組写真でビックリしました。これも 一年を通して審査員を攻略する年度賞候補作家の作戦なのか……と瞠目しつつ、ブルーの配色で統一された本作品から、一足早いカラっと晴れ渡った夏の風を感じながら拝見しました。建築家・谷口吉生氏の代表作の一つとされる豊田市美術館で撮影されたものですが、野外のブルーの吹き抜けや柵のあるスロープ、映り込みのあ るミラーのオブジェと建屋の対比、そして青空など、 ハイキー調の露出と構図を巧みにコントロールして作品を構成しています。モデルの奥様の明るい素敵な笑顔でのジャンプも作品に躍動感を与えています。

第3位 岸田 緑 (兵庫)

5月号 特選 「ニチジョウノヒカリ」

【選評】窓から差込む柔らかな“日常の光”に照らされた、ささやかな情景を三枚でうまくまとめています。 ①の物干しが影を落とす網戸、②の無防備におへそを出して居眠り中のお嬢さんの寝顔、③の鍵盤に映る指の影とボケが美しいピアノ演奏のカット。それぞれに写し込まれている被写体は決して特別な被写体ではなく、作者の家庭でのごく日常的な営みの一瞬でしかありません。しかし縦位置にとらえた計算された構図と、巧みな順番の三枚組の構成により、柔らかな光の中、 そよ風とともにどこからかピアノの調べが聞こえてくる、 そんな幸せな感覚を味わえる組写真になりました。そして、このような作品の世界観を象徴的なタイトルが補完しています。