1月号「正月」長谷俊明(広島)

1月号「正月」長谷俊明(広島)

【選評】年の終わりと始まりを迎えるまさに師走の緊張感のようなものが写っています。迫力のある潜水艦が整然と3台も揃い、その存在感は非常にフォトジェニックです。その艦橋にはしめ縄が飾られており、日本人のアイデンティティを感じさせます。姿勢の良い自衛官が国旗を掲げる姿は凛々しく、本当に力強い表現となりました。センターをずらして構図のバランスを取ったところにセンスとテクニックがありますね。(熊切大輔)

2月号「ダッシュ」岡本早苗(徳島)

2月号「ダッシュ」岡本早苗(徳島)

【選評】モノクロで仕上げたことで、犬の瞳の輝きが、より印象強くなり、引きつける一枚です。4本の足の動きと軽く開いた口元が、まるで挨拶をしているかのように感じられます。ローアングルからの視点が臨場感を高め、海と人物との配置がいいバランスを生み出していますね。犬の体や地面のディテールも黒の中で美しく再現され、仕上げの良さが際立っています。全体として、構図、質感、瞬間の切り取りが見事な作品です。(佐藤倫子)

3月号「フグの夢」本田厚子(栃木)

3月号「フグの夢」本田厚子(栃木)

【選評】海鮮料理店などの生け簀では、活魚たちが美味しそうに泳いでいます。その光景をとらえた作品ですが、ここにいる二匹のフグは表情がとても豊かです。すごく楽しそうで、このあと人間に食べられるとも知らず無邪気な様子。こちらに何かを語りかけているようにも見えます。水槽のガラス面に映り込んだ空や建物とのオーバラップも効果的で、開放的な雰囲気です。空中を浮遊しているような不思議な世界が描かれていて目を奪われました。(岡嶋和幸)

4月号「餅まき」加藤正樹(愛知)

4月号「餅まき」加藤正樹(愛知)

【選評】節分の餅まき。「福」を持ち帰ろうと大人から子どもまで必死になって餅を掴み取ろうとしています。よくあるケースは子どもと大人を分けて撒くパターンですが、この餅まきはそうではなかったようです。一人お子さんが取りそびれて、必死で切実な表情で撒く人を見上げています。そのなんとも言えない表情と、大人たちがほぼ全員下を向いている瞬間を逃さず切り撮れた技術が秀逸です。モノクロームの仕上げが作品を力強くさせています。 (熊切大輔)

5月号「踊り子」廣富 登(神奈川)

5月号「踊り子」廣富 登(神奈川)

【選評】手前を開放F値で撮影したという作者の意図が見事に表現された一枚です。全体的に黒を強めたことで、まわりが少し暗めな色合いで仕上がり、着物の鮮やかな色合いと少女の顔色の白さや目の彫りの深さが強調されています。またその真剣な表情や手からは、緊張感が伝わり、これから何か始まる瞬間なのか? と想像を掻き立てられます。絶妙な構図と色使いで構成された、独特な空気感を上手に写し出しています。(佐藤倫子)

6月号「異様な」鈴木正美(愛知)

6月号「異様な」鈴木正美(愛知)

【選評】お祭りで悪天候のときによく目にするビニールのカッパ姿ですが、白装束の集団に見えるような切り取り方がユニークです。みんなが同じ方向を向いていて何かに夢中な様子ですが、モノクロなのでその白さ、そして異様さが際立っています。そのような空間の中で少女だけがこちらを向いていて、必然的に目がいきました。誰かを探しているのか、ほかの何かに気を取られているのか、そのあどけない表情がとても印象的に映りました。(岡嶋和幸)

7月号「鳩使いのおじいちゃん」海老澤文男(東京)

7月号「鳩使いのおじいちゃん」海老澤文男(東京)

【選評】お孫さんと遊ぶ夕方の公園。周りに人も少なくなってきたのでしょうか、構図にたっぷり余白を使って2人だけの空間が生まれています。そんな中、日陰に集まる鳩の群れの中で2人にスポットライトのような光が印象的に当たっています。おじいさんの頭の上に止まった時間は長くはないでしょう。よくぞその瞬間をとらえることができました。その瞬間に生まれた表情がなんとも楽しげで、見るものが釣られて笑ってしまうようなほのぼのとした作品に仕上がりました。(熊切大輔)

8月号「嫁ぐ日」中辻義則(岐阜)

8月号「嫁ぐ日」中辻義則(岐阜)

【選評】作品とタイトルから祖母と孫の関係を想像させるような情景ですが、実際にはイベント中の休憩時間の一幕であるとのこと。その事実と私たちの想像のギャップが面白さを際立たせています。まさに、リアリティーと物語性が見事に交差した一枚といえるでしょう。特に印象的なのは、花嫁衣装の女性の少し緊張した、また気遣うような姿と、それを微笑ましくどこか誇らしげに見つめる年配の女性の眼差しです。二人の視線の交わりはないものの、そこには演出ではない偶然の温もりが漂っているようです。(佐藤倫子)

9月号「島の水族館」岡本早苗(徳島)

9月号「島の水族館」岡本早苗(徳島)

【選評】このようなフォトジェニックなシーンに出合うことができ、とてもうらやましいです。水槽に寄りすぎず引きすぎず、港の様子などをバランスよく取り入れ、そのチャンスをしっかり作品にされています。光線状態も絶好で、魚たちが美しく光り輝いて目を引き、狭い水槽の中を生き生きと泳いでいて、画題がストレートに伝わってくる表現です。撮影で余計な小細工をせず、素直に切り取られている点が良かったと思います。(岡嶋和幸)

10月号「悟りの化粧」松浦幸蔵(静岡)

10月号「悟りの化粧」松浦幸蔵(静岡)

【選評】大衆演劇の舞台裏、化粧前で入念に準備を進める座長の姿を印象的に撮影することができました。本番もきっと画になるものでしょうが、その前の緊張感や終演後の安堵感なども、また違った表情をとらえることができます。本作は化粧姿を、光を印象的に使って表しており、初見ではまさに菩薩像かと思わせる、なめらかな陰影と表情、動き。所作の美しさをシンプルなモノクロームで印象的に描くことができました。構図の間のとり方も絶妙で、静けさを感じさせます。(熊切大輔)

11月号「迷い鹿」佐々木 洋(北海道)

11月号「迷い鹿」佐々木 洋(北海道)

【選評】左右に高く積まれた紙ゴミの山が、まるで人工の渓谷のように見えました。その中央にいる鹿がカメラ目線でこちらを見つめており、観る者に「問いかけ」や「訴え」を突きつけてくるような迫力があります。淡い空の色と、紙ゴミのカラフルな色調も印象的。佐々木さんの意図とは違うのかもしれませんが、環境問題や人間の行いへの強烈なメッセージのように感じました。ドキュメンタリー性と同時にアート性も備えた心に残る作品です。(佐藤倫子)

12月号「夏の思い出」片岡美和(愛媛)

12月号「夏の思い出」片岡美和(愛媛)

【選評】2人のとても楽しそうな様子に目を奪われました。若々しくエネルギッシュな瞬間で、笑い声や水しぶきの音が聞こえてくるような臨場感があります。無理のない自然なアプローチが好印象でした。被写体やシーンに撮らされている感じはまったくなく、片岡さんのイメージをしっかり形にされた結果だと思います。上下の空間の生かし方など、構図バランスの良さも光っていて、その部分に文字を入れるなど、何かの広告写真にも使えそうです。(岡嶋和幸)