1月号「凝視」浅羽貞樹(静岡)
【選評】鋭い演者の眼差しが、強いインパクトを与えています。人間の視線は自然と明るいところへ向きます。このようなシーンでは、影の部分に視線を誘導するのは難しいといえます。この作品は光を見逃さず、とても上手く表現していると感じました。演者の鼻根にあたる反射光やキャッチライトで、しっかりと視線を誘導しています。また主題である目を画面中央に配置し、背景を作らず見せたい部分だけを効果的にフレーミングしています。
キヤノンEOS7D・EF24〜105ミリ・F5・1/125秒・ISO250・エプソンSC-PX5VⅡ・エプソン写真用紙/袋井市・1月上旬,14:00頃
2月号「接近」天満厚子(静岡)
【選評】シロクマの背後側から狙っていますが、動きのある被写体を主題に、しっかりとシャッターチャンスをとらえています。ポジション選びが素晴らしいです。光と影、人物の服の色、水の質感など、いくつもポイントがある点もよいですね。シロクマと人物を斜めに配置したことで動きと臨場感が強調され、水の動きによる曲線によってユニークさも加わりました。
ニコンD500・AFニッコール18〜300ミリ・F8・1/1250 秒・ISO1000・キヤノンTS8330・エプソン写真用紙絹目調/静岡市・2月上旬,11:00頃
3月号「雨上がる」佐藤泰子(群馬)
【選評】あぜ道に出来た水溜まりに映る、青空とヒマワリの鮮やかな色に目を奪われました。実際の花はほとんど写さずに、リフレクションで表現をした作者のセンスが光っています。対角線を使うことで奥行きやリズムを感じさせ、また明暗によってダイナミックなイメージも加わり、とても印象的な作品です。夏の雨上がりの空気感が伝わってきます。
キヤノンEOS7D MarkⅡ・タムロン16〜300ミリ・PL・F11・1/30秒・ISO500・三脚・キヤノンPIXUS PRO-100S・富士フイルム「画彩」プロ/みどり市・10月中旬,6:00頃
4月号「舞台前」岸田 緑(兵庫)
【選評】バレエの発表会の舞台裏でしょうか。物語性のある表現に、自然と惹き込まれました。奥側に見える舞台との距離感も、うまく表現されています。主題にした2人の少女はシルエットなので表情こそ見えませんが、輪郭から緊張感が伺えます。一番の魅力は2人が向き合っており、左側の少女の口元が開いているということ。会話が聞こえてくるような作品になっています。右側の人物の輪郭線も効果的ですね。逆光で魅力的にとらえています。
キヤノンEOS5D MarkⅢ・EF24〜105ミリ・F8・1/250秒・ISO4000・キヤノンPIXUS PRO-10S・富士フイルム「画彩」プロ/尾崎市・5月,12:00頃
5月号「ダンス仲間」島本佳春(大阪)
【選評】躍動感のあるブレを生かした作品ですが、高所からとらえたハイアングルが非日常な印象で効果的に感じられます。タイトルである「ダンス仲間」も、しっかりと表現されていますね。このようなブレを生かした作品は、ブレていない被写体を入れることで静と動の対比が生まれ、動きが強く感じられます。また、フレーミングされた球体の映り込みによって、まわりの状況も伝えています。広がりが感じられ、面白い効果になりました。
ソニーα77Ⅱ・DTズーム16〜105ミリ・F13・1/2秒・ISO160・大阪市・9月上旬,18:00頃
6月号「バースデイ」上甲成俊(大阪)
【選評】生まれたばかりの赤ちゃんの鳴き声が聴こえてくるような、心に響く作品。広角レンズでとらえたことで、臨場感あふれる表現になっています。ドキュメント写真のようでもあります。一番の魅力は、赤ちゃんの表情がしっかりと伝わること。焼き込みの処理も絶妙で、インパクトがあります。広い画角でまわりの状況をたくさん写していますが、色の情報がないモノクロにしたことで、主役である赤ちゃんに視線が向かいやすくなっています。
ニコンCOOLPIX P310・4.3〜17.9ミリ・F5.6・1/60秒・ISO100・エプソンEP-807AR・エプソン写真用紙絹目調/川西市・9月下旬,16:00頃
7月号「進むべき道」川口保幸(千葉)
【選評】海に向かってまっすぐ伸びる桟橋が、とても印象的です。スローシャッターでとらえた波の流れによって、動きも感じられます。撮影者自身の影を入れた作品は多く見られますが、桟橋を被写体にしたことで独自性が高まりました。広角レンズを使って遠近感を強調し、桟橋の奥に見える人物を小さくとらえた点は、要素の多いシーンを上手にまとめている印象です。沖に並ぶ3人のサーファーの姿がユニークで、前向きな心情が伝わってきました。
ニコンZ 6II・ニッコールZ 14〜30ミリ・F9・1秒・ISO100・三脚/南房総市・3月下旬,8:00頃
8月号 「雪模様」金沢秀一(山形)
【選評】色を引き算することで、横断舗装や車のタイヤ痕などの輪郭がはっきりします。またコントラストを上げてメリハリをつけたことで、インパクトが加わりました。逆三角形に横断歩道を配置していますが、少し不安定な印象となり、雪の日のシーンにぴったりな表現になっています。歩く人物を一人だけとらえた点も、雪の厳しさとともに孤独を強く感じさせます。横断歩道と交差する車のタイヤ痕から、人生を比喩しているのだと感じました。
キヤノンEOS R6・RF100〜500ミリ・F8・1/1600 秒・ISO800・エプソンEP-883AW・ピクトリコ写真用紙/山形市・3月上旬,9:00頃
9月号「バベルの塔」米長時正(北海道)
【選評】ジュエリーアイスで作られたアート作品。インパクトがありますね。氷を照らしているのは朝日だと思いますが、逆光をドラマチックに表現しています。ローポジションからとらえた氷を、「バベルの塔」に見立てています。天に達するほどの高い塔を建てるつもりが崩れてしまうバベルの塔と、溶けてなくなる氷をリンクさせているのでしょう。奥に人物を小さく配置したことで、スケール感が伝わるとともに、物語性も感じさせます。
キヤノンEOS R6・RF15〜35ミリ・PL・F18・1/640秒・ISO1250・キヤノンPIXUS TS8130・キヤノン写真用紙光沢ゴールド/北海道豊頃町・1月上旬,7:00頃
10月号「蟄居の慰み」金本 清(香川)
【選評】鳥居をトンネルのように見立てて撮影した作品です。人の視線は明るいほうへ向くという心理を利用した、効果的な構図ですね。主題である花見を楽しむ人たちに、自然と目が向くようになっています。春の訪れを喜ぶ会話が、こちらにまで届いてくるようです。朱色の鳥居のインパクトとともに、奥行きと臨場感も出ていますね。タイトルにつけられた「蟄居」という言葉も、思うように出かけられない時世を上手に表現されています。
キヤノンEOS6D・EF24〜105ミリ・F4.5・1/320秒・ISO160・キヤノンPIXUS PRO-100S・キヤノン写真用紙光沢ゴールド/さぬき市・4月上旬,14:00頃
11月号「帰り道」吉田洋子(岡山)
【選評】作品を見たときに、一瞬どのような状況なのか驚きました。建造物を使った巨大な写真の展示なのですね。モノクロ写真と美しい空、たくさんの蟹が写る風景と荒れた廃屋、人物などの対比がとても魅力的です。全体に対する廃屋の分量が絶妙ですね。寄り過ぎず引き過ぎず、とてもバランスのよい構図です。撮影する時間によってイメージが大きく変わりますが、早朝のタイミングを狙ったことでドラマチックな印象になっています。
富士フイルムX-Pro2・XF18〜135ミリ・F7・1/640秒・ISO500/倉敷市・6月上旬,17:00頃
12月号「虎杖浜の朝」坂本ツルカ(北海道)
【選評】ぱっと見て惹かれた作品でした。美しい夕暮れ時、学校から自転車で家に帰る学生、長くのびる影、まるで映画のワンシーンのようですね。作品から物語が感じられます。画面左側に写っている水路にあるのは、浄水をするものでしょうか。これを主題にしたことで、水の流れる音が聞こえくるようです。なんと言っても、撮影された時間がよかったですね。逆光を生かした水のきらめきも上手に表現していますし、奥行きが伝わる構図も素敵です。
ニコンD750・AFニッコール28〜300ミリ・F6.3・1/60 秒・ISO200・エプソンPX-5V・エプソン写真用紙クリスピア/北海道白老町・9月中旬,5:30頃