第1位 柄松 稔(兵庫)

8月号 推薦「待ち人」

――冬の西日が画面奥に見えます。
立木 路地裏という舞台がいいよね。うらぶれているというか、水はけの悪そうな感じが魅力的。放射構図の先に太陽があって、それを希望と感じるのか、一日の終わりと感じるかは見る人次第だけど、そこに置かれた自転車は路地をさ迷うのか意気消沈とも感じる。
――背景のボケ具合がボーッと眺めているかのように感じます。
立木 デジタルになってシャープな写真が増えたけど、レンズや絞りを使ったボケを活かすのも写真ならではの表現。なぜか昭和の残り香的なイメージにもなっていて感情移入できる一枚になっているね。

ソニーRX100Ⅶ・9~72ミリ・F4.5・1/640秒・ISO200・エプソンEW-M873T・エプソン写真用紙/神戸市・3月中旬,14:45頃

2位 佐海忠夫(栃木/全日写連サン支部)

2月号 推薦「主演女優」

――最後は今月の推薦作品になります。
立木 ゲネプロかなと思うほどの雰囲気だけど、演技した目と小道具に向けてストロボの光をまっすぐに当てたことで、存在感を高めた。こういう場所に入れる関係者なのかな。限られた時間でも狙い通りに撮れるのは経験が豊富なんだろうと思う。
――背景にいる人たちは我関せずです。
立木 公演を控えて必死なんだろうけど、主演女優だけはこの余裕。そんな対比も魅力だね。これは一枚で語る力があるけど、舞台裏を撮り続けるとストーリーを写真で表現できるから、想像力を働かせて撮ってほしいね。

キヤノンEOS5D MarkⅡ・EF24~105ミリ・F6.3・1/160秒・ストロボ・ISO3200・キヤノンPIXUS PRO-10S・富士フイルム「画彩」プロ/栃木県茂木町・11月中旬,16:00頃

第3位 中原秀夫(岡山/吉備路写真クラブ)

5月号 推薦「シャワー」

――ベルトコンベアーで牡蠣の殻と水に選別、実を食べにカモメが集まる、飛沫を撮っていたらフェリーが入ったと。
立木 みんなカメラマンのために演出してくれたわけで、感謝のしようもないくらい見事な光景の連続ってわけだ。写真を長くやっているとこういうことが時々起こる。
――そのチャンスをつかめるかどうかですね。
立木 しょっちゅうあることじゃないから、こんな光景を見逃している人ってたくさんいると思う。だからカメラマンは常にアンテナを張っておく必要があるわけ。写真がいいとか悪いを超えて、次から次へといろんなものが来た。眼差しは一点を見つめているといろんな変化が起きることを示しているね。

ニコンD700・AFニッコール28~300ミリ・プログラムオート・ISO1600/備前市・11月下旬,10:00頃