第1位 袰岩正克(岩手)

11月号 特選「耐え抜いて」

【選評】我先と春の到来を待ち望み、動き出す森の余情にゆっくりと生命の気配が満ちる瞬間です。清楚なミズバショウが狙いではあるのでしょうが、あえてブナの若木の立ち上がりを手前に置いた構成が競い合う感情を生み、春の情景を面白くしました。残雪のバランスや背景の木立の配列など、細部まで気づかいがなされた見事な仕上がりです。(辰野)

キヤノンEOS6D MarkⅡ・EF16~35ミリ・C-PL・F16・0.5秒・三脚・エプソンPX-5600・エプソン写真用紙クリスピア/八幡平市・5月下旬,17:00頃

第2位 加藤優治(長野)

5月号 特選「月夜に浮かぶ」

【選評】朧に浮かぶ満月の夜に撮影することで、幻想的な春宵を描いています。漆黒の闇へと投げかけられた桜の感情は光を求めて彷徨っているかのよう。まるで千住博画伯の「月映夜桜」を彷彿させるような端正な構成とともなう品格の完成です。ライティングも適切でそのシンプルさから生まれる余情も心の琴線に響き素敵でした。(辰野)

ソニーα7RⅢ・FE70~200ミリ・F16・1秒・ISO1600・三脚・エプソンSC-PX5VⅡ・ピクトリコセミグロスペーパー/飯田市・3月下旬,19:00頃

第3位 三浦裕之(茨城)

4月号 特選「朝陽に染まる」

【選評】人知れず小さな小川でも条件を加えることで想像以上の自然を見つけることができます。細い笹の葉にしっかり積もった雪を前景に置き、おだやかな水面を配した構図は見事です。無風だからこそ情緒的な雰囲気を作り上げることに成功しました。朝日を直接登場させることなく暖味を備えた模糊のように見せる潜在的な工夫が作品の見せどころになっています。  (前川)

ペンタックス645NⅡ・FA45~85ミリ・C-PL・F22・1/3秒・フジクロームベルビア100・三脚/鹿沼市・1月中旬,7:00頃

第4位 佐藤泰三(愛知)

6月号 特選「雪煙」

【選評】木立から立ち昇る雪の粒一つ一つが、まるで生きているかのようで面白いです。とっさの出来事だったと思うのですが、慌てずに最良と思える構図で撮影しています。特に空を極力入れず、雪煙の力が逃げてしまうのを避けた点は高評価。背後の林のトーンを残し、風景に厚みが出ていることも良いですね。この状況判断がお見事でした。(古市)

ニコンD610・AF-Sニッコール28~300ミリ・UV・F13・オートプログラム・ISO800・エプソンSC-PX5VⅡ・富士フイルム「画彩」プロ・三脚/長野県売木村・12月下旬,10:00頃

第5位 中澤 勝(新潟)

2月号 特選「季節の移ろい」

【選評】秋が過ぎ、厳しい冬を迎える前の会話が聞こえて来るような作品です。もちろん会話は想像の世界ですが、そうやって鑑賞者に思わせる世界観が写真の魅力でもあります。残り柿とツルの青葉がとても色鮮やかゆえに相対的な構成となり、見えない音源が発せられるのでしょう。霜吹いた青白い枝も背景の造形美として際立ち、寒々とした季節の移行を後押ししています。

キヤノンEOS5DS・EF100~400ミリ・C-PL・F16・1/10秒・ISO400・三脚・エプソンSC-PX5VⅡ・ピクトリコプロセミグロスペーパー/十日町市・12月中旬,9:00頃