1月号「モザイク模様」佐藤泰三(愛知)

1月号「モザイク模様」佐藤泰三(愛知)

【選評】河川敷でよく見かける正方形のコンクリートにかぶる水がこのような現象になったのかと思いました。コメントによれば厚い氷が裂けていたとのこと、偶然とはいえこのような出合いも経験がなしえる着眼点と言えます。規則正しい枡の形も魅力的ですが、細かいひび割れに加え、氷の厚みを表したことが勝因になりました。画面の上下に気になる点もありましたが、それをも勝るほどの魅力的な作品です。(前川)

キヤノンEOS5D MarkⅡ・EF28~300ミリ・PL・F13オート・ISO200・三脚・エプソンSC-PX5VⅡ・富士フイルム「画彩」プロ/長野県売木村・2月下旬,8:00頃

2月号 「霧間」三浦裕之(茨城)

2月号「霧間」三浦裕之(茨城)

【選評】身近にある素朴な秋ですが、森が奏でる不変な美しさを素直な想いで見つめています。空間の心地良さに導かれ、心が浄化されるかのような空気感も魅力です。淡い霧を透かし、深まる森の色彩も趣のある和のテイストを誘い、まるで和染色の上質な着物柄を見るかのよう。被写体に依存する表現が多いなか肌で感じる感覚を優先し、さり気ない美意識として奥ゆかしく描いた作者の感性に魅かれました。(辰野) 

キヤノンEOS R・EF24~105ミリ・C-PL・F16・0.5秒・ISO400・三脚/糸魚川市・10月下旬,8:00頃

3月号「土に還る」袰岩正克(岩手)

3月号「土に還る」袰岩正克(岩手)

【選評】人によっては目を背けたくなる光景だと思いますが、生きとし生けるもの全てに待ち構えている、抗えない運命の輪が写っていて、心を抉られました。我々に与えられた責務はこの命をまっとうすること。その価値は人も獣も等価であるという美しさが伝わってきます。背後の蜘蛛の巣も、この骸が横たわる刻の長さを感じさせ、効果的です。(古市)

キヤノンEOS6D MarkⅡ・EF16~35ミリ・C-PL・F16・2秒・三脚・エプソンPX-5600・ピクトリコセミグロスペーパー/八幡平市・10月上旬,9:00頃

4月号「波煙」吉田正男(福島)

4月号「波煙」吉田正男(福島)

【選評】海水が盛り上がり勢いのある響きがダイレクトに伝わってきます。予選の時から躍動感が伝わって気になる作品でした。水中に隠れている岩礁が変則的な波を作りだし、潮見や満潮時などの時間を計算した上での作画だと推察します。波濤と返し波とが互いに寄せ合う複雑な動きも見事にとらえました。圧倒される動きに加え、光の効果も備えた独自性を感じます。 (前川) 

キヤノンEOS90D・EF70~300ミリ・F8・1/6400秒・ISO500・キヤノンPIXUS iP8730・松本洋紙店絹目調/いわき市・12月上旬,14:00頃

5月号「雪風」小笠原 聡(山梨)

5月号「雪風」小笠原 聡(山梨)

【選評】厳冬の無機質な空間を切り裂く光の存在と、容赦なく吹きすさぶ毛嵐の姿をシンプルな構成で見せたことでリアルな危機感が生まれています。雪原を這う毛嵐の動感は大地を支配する冷酷な息づかいでもあり、響く風音からは感情を寄せ付けない意思を感じるものです。まずは作画イメージがあり、表現としてこの空間を求めただろう力強い作品です。(辰野)

ニコンZ 50・タムロンAF18~250ミリ・C-PL・F22・1/400秒・ISO100・三脚・エプソンPX-G930・エプソン写真用紙クリスピア

6月号「氷柱花」江村俊顕(高知)

6月号「氷柱花」江村俊顕(高知)

【選評】まさに花が開いたかような氷の造形が面白いです。かすかな光によって白く光り、主役としてしっかりと目立っている点も文句なし。ともすればその造形のみに視点がいってしまいがちになるのですが、背景をうまく取り入れたことで、この氷の花が種子を吐き出しているように見え、SFのような不思議な世界観が演出されています。(古市)

ソニーα7R Ⅲ・FE90ミリ・F2.8・1/250秒・ISO1600・エプソンEP-10VA・ピクトリコプロセミグロスペーパー/高知県仁淀川町・12月下旬,16:00頃

7月号「厳冬に輝く」三浦裕之(茨城)

7月号「厳冬に輝く」三浦裕之(茨城)

【選評】霧氷に輝く木立の配列の美しさも魅力的ですが、この作品は起点がしっかりして奥行きに広がりを見せる構図が際立っていました。加えて内容の関連性としてのダイヤモンドダストの配置も良く、互いの存在感をより強めるタイミングをとらえた瞬間とも言えます。細氷も今では見慣れてきましたが、情景の広さを取り込んだ卓越した狙いです。(前川)

ペンタックス645NⅡ・FA150~300ミリ・C-PL・F5.6・1/500秒・フジクロームベルビア100・三脚/松本市・2月中旬,7:00頃

8月号「霞たゆたう」大堀千春(神奈川)

8月号「霞たゆたう」大堀千春(神奈川)

【選評】豊かな緑の喝采と豊富な水流に自然の循環を感じずにはいられない風景です。霞と飛沫のベールも木々の柔らかなトーンを誘い、潤う渓の臨場感を誘っています。流れるように入れた幹のラインが印象的で、あたかも水を求めて枝が成長を遂げているかのよう。手前のやや雑然とした扱いもこの場ではナチュラルな自然観ですね。淡白な味わいですが自然なるものの不変の美しさを確として伝えている作品です。(辰野)

ニコンD850・AFニッコール16~35ミリ・PL・F16・1.3秒・ISO30・三脚・エプソンSC-PX1V・エプソン写真用紙絹目調/富士市・6月下旬,11:00頃

9月号「日の出」有賀直記(東京)

9月号「日の出」有賀直記(東京)

【選評】霧がなだらかな丘の上を這い、幻想的な雰囲気が醸し出されています。ちょうど霧と暗雲の間に太陽が顔を見せたことでカラマツの存在が浮き上がり、寒々しい風景の中にあっても光の温もりを感じます。推察ですが、太陽はこの後すぐに雲に隠れてしまったのではないでしょうか。わずかなチャンスを見逃さなかった集中力の賜物です。(古市)

ニコンZ 7Ⅱ・ニッコールZ 24~200ミリ・C-PL・F6.3・1/2500秒・三脚・エプソンSC-PX1V・エプソン写真用紙クリスピア/諏訪市・12月下旬,7:00頃

10月号「羽ばたく」松本義信(愛知)

10月号「羽ばたく」松本義信(愛知)

【選評】土壌がえぐられ根っこに氷柱が成長する姿を時折見かけることがあります。作者は超広角で放射状に広がる翼を表したとありますが、透水性の地盤からの雫が自然と不可逆的に変わっていく現象を上手くとらえています。何でもない通り道の素材でも、時には直観に感じ取る観察力が功を奏し、配列の美しさを効果的にとらえた作品です。(前川)

キヤノンEOS6D MarkⅡ・EF16~35ミリ・F11・1/100秒・ISO2500・キヤノンPIXUS PRO-100・富士フイルム「画彩」プロ/愛知県設楽町・3月上旬,9:00頃

11月号「降り注ぐ」福井 齋(滋賀)

11月号「降り注ぐ」福井 齋(滋賀)

【選評】一見すると凡庸な草むらのようですが、収穫を終えた裏庭畑と思しき情緒が漂っています。放置された獣除網に光るクモの巣や少し色づき始めた秋の気配からも、有意な時間が過ぎていったことが伺い知れます。光芒の勢いもここでは空間の引き立て役ですね。素材は乏しくとも、複雑な感情を重ねることで季節の深まりを求めた素敵な感性でした。(辰野)

キヤノンEOS5D MarkⅢ・EF24~105ミリ・F11・1/125秒・ISO200・三脚・エプソンEP-10VA・富士フイルム「画彩」プロ/綾部市・10月中旬,8:00頃

12月号「群生」加藤優治(長野)

12月号「群生」加藤優治(長野)

【選評】静かにシダを侵食していくかのようなユキノシタの群生が恐ろしくも美しく感じます。これだけでも耽美的な風景として十分評価に値しますが、そこに蝶が飛び込んで来るという素晴らしいタイミングにも恵まれ、動的な力感も生まれました。この静と動の混在によって植物と昆虫が共存していくという輝かしい命の波動が見えています。(古市)

オリンパスOM-1・Mズイコーデジタル40~150ミリ・PL・F8・1/320秒・ISO200・エプソンSC-PX5VⅡ・ピクトリコセミグロスペーパー/飯田市・6月中旬,11:00頃