1月号「悪戯」岩崎良子(静岡)

1月号「悪戯」岩崎良子(静岡)

【選評】見る人をなんとも愉快でハッピーな気分にさせてくれる作品です。実は悪戯には上手い下手があるもの。この作品はバランスの良い「上手い悪戯」であり、された方もした方も、おそらく誰も傷つかない後味の良いものです。その場だけで面白がって終わらせず、完成度の高い作品として仕上げ、世に発表した姿勢は素晴らしい。悪戯だけでなく、写真作家としてのセンスも感じました。

2月号「美味」村上弥生(大阪)

2月号「美味」村上弥生(大阪)

【選評】まずはカワイイ! 普通はお子さんの写真を撮る時、顔は入れるものという観念がありますが、このように顔を見せなくても「カワイイ」は引き出せるという、工夫とセンスのお手本のようです。味見の時とのことですが、お子さんの下唇と下あごに作品の見せ場が詰まっています。背景がスッキリとして、正面からの適切なフレーミングと構図も◎。露出とホワイトバランスも適切で、見せ場を完成度高く「撮り切った」のが勝因ですね。

3月号「雨の日」亀田石生(和歌山)

3月号「雨の日」亀田石生(和歌山)

【選評】何ともファンタジックな作品です。シャッターに描かれた絵を車の窓ガラス越しに撮影したそうですが、ピントが窓ガラスの雨粒に合っているからこそ、あいまいで幻想的な印象になっています。こうした判断も、亀田さんに「こういう写真にしたい」というきちんとしたイメージがあるからこそ。被写体を見つけたあと、瞬時に完成形をイメージし、撮影する……。それが上手い写真を撮る秘訣です。

4月号「おおきくなれー!!」飯泉沙由里(千葉)

4月号「おおきくなれー!!」飯泉沙由里(千葉)

【選評】「おおきくなれー!!」と高い高いをされて喜ぶ赤ちゃんと、その成長を願うお母さんの、実に微笑ましくさわやかなショットです。広角レンズの中心から外に向かうほど伸びてゆく性質を利用して、お母さんの足と青空が伸びて写ることで、高低差のスケール感の見せ方に繋がっています。2人の青と白の服装も、青空と白い雲にリンクしていて爽快! 文句なしの金賞です。

5月号「月に向かって」蓮池のりえ(岡山)

5月号「月に向かって」蓮池のりえ(岡山)

【選評】宇宙をゆらゆらと漂いながら、月へと向かうクラゲ……。素晴らしいストーリー性を感じる作品です。作品の中の「月」ですが、おそらく水槽に映り込んだ室内の照明だと思います。これを見つけた時に瞬時にドラマをイメージし、高い完成度で撮り切った蓮池さんのセンスを感じました。映り込みの写真は、因果関係のないもの同士を、撮る側が結びつけるアート。技術はもとより、想像力と発想力が大切です。お見事!

6月号「朝の光」亀田石生(和歌山)

6月号「朝の光」亀田石生(和歌山)

【選評】数ある応募作の中でも、一枚だけ異質な存在の作品でした。古くホコリにまみれたような車内から何を撮るかと思えば、ぼんやりと差し込む日差し。こういうシーンに出くわし、それをあるがまま美しいと受け入れて撮影する。亀田さんは素晴らしい感性の持ち主ですが、それは先入観や固定観念に囚われていないからでしょう。情報が多い昨今ではありますが、そこに振り回されず、自分が感じる美しい・正しいを信じられる人は、こういう写真を撮れるのだと思います。

7月号「朝のプレリュード」城戸千代子(神奈川)

7月号「朝のプレリュード」城戸千代子(神奈川)

【選評】今回の金賞は、実に美しいモノクロプリントです。選評などでよく耳にする「階調の美しさ」「シャドー(暗部)とハイライト(明部)」「光の周り方・露出」「フレーミング」「構図」というものを知りたければ、ぜひともこの作品をお手本として研究してほしいくらいです。それにしても、良い時間帯に良い場所から撮影していますね。プリントも作品に合った用紙を選ばれていて好印象。上手さが光るレベルの高い一枚です。

8月号「秋晴れ」青島 隆(静岡)

8月号「秋晴れ」青島 隆(静岡)

【選評】真っ青な空を背景に、2匹の恐竜がジャンプ! ユーモラスかつさわやかな作品です。まず、良いシーンを良いアングルからねらっていますね。わずかに右下がりにして水平を崩していますが、もしこれが恐竜と同じ目線でフラットに撮っていれば、平凡な着ぐるみの恐竜のスナップとなってしまったでしょう。きれいな青空に浮かぶ真っ白な雲や、芝生上の影も全体のバランスを整えており、過不足のない完成度の高さを感じます。

9月号「紬・4歳」齋藤圭子(三重)

9月号「紬・4歳」齋藤圭子(三重)

【選評】遠くを見つめるまっすぐでキラキラした瞳にしっかりピントを合わせており、そして髪の毛の動きが何とも言えず素晴らしい。このドラマチックな瞬間を、見事に写真として収めています。撮影地がテーマパークとのことで、普通はそれらしき情報を盛り込もうとするところですが、齋藤さんはここで「そういう場所だからこそ生まれる孫娘の表情が主題」と考え、このフレーミングにしたのでしょう。自分の感性を信じられる人だからこその作品です。

10月号「ユニークな顔」亀田石生(和歌山)

10月号「ユニークな顔」亀田石生(和歌山)

【選評】デメキンはただでさえユニークなのに、さらにこんなユニークに写すとは、もう褒め称えるしかありません。水槽の形状によって本来の形が歪んだところを上手くとらえ、そして3匹がバランスよく並んだところに遭遇しており、亀田さんはラッキーだと考えるかもしれません。しかし、良い作品を生み出したいという気持ちの強い人は、被写体を引き寄せる不思議な力を持っているということは、覚えておいて損はありません。そんな執念と念力が生んだ快作です。

11月号「赤い口」亀田清子(和歌山)

11月号「赤い口」亀田清子(和歌山)

【選評】衝撃の一枚です。こってりとしたマゼンタ色の浮き輪に身をゆだねる少年。その腕はだらりと下がり、何とも言えないけだるさと恍惚とした表情が印象的です。その手の重みで、丸い浮き輪が唇のような形状になっているので、まるで飲み込まれていくようです。タイトルのとおり、主役は少年ではなく口に見える浮き輪であることがわかりますが、フィルム特有のざらついた粒状感と暗く沈んだトーンで何とも意味深。これぞ訴求力の強い写真です。

12月号「赤い目玉」村上弥生(大阪)

12月号「赤い目玉」村上弥生(大阪)

【選評】娘さんの愛らしい姿を収めた写真といえばそのとおりですが、私には「サクランボをどう印象的に写すことができるか?」をお題にアイデアを練り、工夫を重ねて撮られていると見えました。そう考えると、とてもセンスが良く、テクニックのある方だなと評価できます。作者はいつも娘さんの写真を応募されていますが、この一枚には今までの一線を越えるためのヒントがあります。生みの苦しみを経た傑作を。今後も期待しています。