第1位 田中万三(愛媛)

11月号 推薦「帰り道」

立木 お疲れの様子を斜めにして撮ったことでその印象がさらに強調されている。これを寂しそうに、という目線で見るのは決めつけだね。人生を歩んできて、顔や手のしわ、ふとした表情に出てくるものをどう感じるか、それをどう撮るか、それが写真の魅力。
——モノクロだと伝わるものが変わってきます。
立木 目の前のものを忠実に写す記録と、イメージとして伝える種類のものもある。何をどうしたいかによって手法は選べばいい。ただ、地球上にあるすべてのものは写真のためには存在していない。撮らせてもらう、という気持ちは大切だけど、それ以上になにかお役に立てることがないかなと今でも思うよ。

第2位 丹下利勝(愛知)

1月号 推薦「電柱」

立木 昔って電柱を主役にするというのはめったになかったよね。どちらかというと外そうとする歴史が長かった。でも最近は、電柱も悪くないって流れになってきている。そのものズバリのタイトルも意外性があった。1本の電柱を、1本の松のように麗々しく入れるのがいい。
——その前には祭り前の少女が立っています。
立木 立っていることを強調するために電柱を入れているわけで、それを引いて撮っていることでイメージとして繋がる。虫送りの神事らしいけど、白塗りに普段の衣装、そして田舎的な雰囲気の背景。迫らない撮り方が空気感までも伝えてくれた。

第3位 齊脇勇治(大阪)

2月号 推薦「ジンベエザメ」

——水族館イチの人気者。
立木 なぜこの写真が今月のトップなのか、と仲間内で議論してもらえたら嬉しい。腹か胸かわからないけど、そんなジンベエザメを大胆に入れて、驚きを与えているのがいいんだ。まるでプリントから飛び出しそう。
——確かに応募作品の中でもひときわ目を引きました。
立木 いまの写真の流れは、完璧すぎるものより、少し崩したところに面白さを感じて評価する見方もあるから、鑑賞態度をそういう方向にすると魅力が伝わってくるし、撮影方法ももっと自由になる。こういう場面でなぜか人物は右に入っていることが多いけど、なにか心理的な影響とかあるのか、ちょっと気になる。