1月号「おじゃましま~す!」渡辺けい子(山梨)

1月号「おじゃましま~す!」渡辺けい子(山梨)

【選評】超メタリックな光沢感に満ちた画面がとにかく目を引きました。カマキリの表情と視線もインパクトがあり、ムラサキシキブの紫色が大きな存在感を放っています。少々色味が強すぎるので抑えたほうが良いですが、グリーンとバックの黒、それに紫の三色での構成がシンプルにまとまっています。もう少し絞っても面白いかもしれないですね。(前川)

2月号「散り花情景」鵜飼あや子(愛知)

2月号「散り花情景」鵜飼あや子(愛知)

【選評】花が散る時期と風が吹いたすぐ後など、さまざまな条件が重ならないとこのような状況にはなりません。散った花弁のボリューム感と優美さに加え、写り込みのシダレウメの気品ある姿をひとつの画面に入れたことでこの作品の完成度が増しました。リアルでありながらどこか夢の中を漂うようなファンタジーさを持ち合わせた作品です。(岡本)

3月号「雪融けの幻」大橋 晋(東京)

3月号「雪融けの幻」大橋 晋(東京)

【選評】霧に包まれた小さな桜の真上に、虹色の後光が射すとは何とも不思議で幻想的な作品です。よく見ると桜の後ろには新緑や残雪も見えるので雪深い土地なのでしょう。水の浮く手前の畑を入れたことで画面が引き締まり、この桜の育つ環境も伝わってきます。ほんの数秒しかないシャッターチャンスを見事なフレーミングでとらえています。(米)

4月号「スター誕生」亀岡芳雄(福島)

4月号「スター誕生」亀岡芳雄(福島)

【選評】透過光のようなSF的な光がどのような状況で生まれるのか、とても不思議です。混沌とした世界でありながら、おたまじゃくしが一匹だけすっきりとヌケていて引き締まっています。ミクロを凝視していながら、気がつくとマクロの視点に立っている。行きつ戻りつしながら発見に立ち会うような、そんな感覚に陥ります。(前川)

5月号「大樹の佇まい」佐藤哲哉(大分)

5月号「大樹の佇まい」佐藤哲哉(大分)

【選評】しっとりと濡れて苔むした幹肌や、生物が脈打つようにゴツゴツとした形状など、この樹の持つ妖艶な存在感を画面いっぱいにとらえた迫力ある作品になっています。霧の中での撮影、主役にあたる微かな光、この大樹を表現するのにベストな状況でした。見えている以上の得体の知れない大きな姿に引き付けられました。大きく伸ばしたプリントで見てみたいです。(岡本)

6月号「霧の渓流」松本義信(愛知)

6月号「霧の渓流」松本義信(愛知)

【選評】静かな早朝の時間、岩の上に一羽のカワセミという絵画のような美しい光景です。デジタルカメラの普及で飛行中や捕食の瞬間などをアップで撮った写真は多く見かけるようになりましたが、このように風景に溶け込んだカワセミの写真は多くはありません。蒼い世界とカワセミの翡翠色が見事に調和し、格調高い作品になっています。(米)

7月号「ポーズ」西川正一(石川)

7月号「ポーズ」西川正一(石川)

【選評】この作品の最も優れているところは、ねらった時間帯に抜群の斜光線でとらえたことです。被写体のユニークなポーズや水面に反射していることも強いですが、何と言っても良い光を活かしたことですね。それに背景がバッサリと落ちているのも効いています。とにかく光を見極める。写真が魅力を解き放つ大事な要素のひとつだと思います。(前川)

8月号「幻想桜」歌川敏美(福島)

8月号「幻想桜」歌川敏美(福島)

【選評】なんとも妖艶で、幻想的な光景でしょう。模様までも描写された雲間から覗く満月が印象的です。垂れこめた黒い雲さえも味方につけたような、怪しげな雰囲気に引き込まれました。雪山に沈む満月と日の出前の一瞬の時間帯、青く色被りした桜の咲く斜面に白い花木がぽつんと一本目立ちます。濃厚な色合いで見事に春の妖艶さを表現されました。(岡本)

9月号「奏でる命」松岡俊行(長野)

9月「奏でる命」松岡俊行(長野)

【選評】森の木々に囲まれた水辺に命を育むゆりかごが白く輝いています。アンダー気味の描写が、その場の厳かな雰囲気を伝え、静寂感と美しさが伝わってきます。おそらくサンショウウオの卵嚢だと思いますが、枝からぶら下がっている様子は初めて見ました。タイトルも素晴らしく、いつまでも残したい豊かな自然を象徴する光景です。(米)

10月号「リズム」村田一史(山梨)

10月「リズム」村田一史(山梨)

【選評】どんな状況で撮ったのだろうと、想像が膨らみました。キラキラとした玉ボケが画面いっぱいに広がっていて、そのなかに小さなクモをシルエットで写すことで、生態をとらえた作品とは全く異なる幻想的な作品に仕上がりました。主役よりも背景に広がる玉ボケを多く取り入れた、大胆な作画も破壊的な魅力がありました。(岡本)

11月号「モンスター」青木幸子(埼玉)

11月「モンスター」青木幸子(埼玉)

【選評】雨上がりでしょうか。水滴をまとったクモの巣が美しく広がり、その奥に待ち構える主の存在感が抜群だなあ。目を凝らしてみれば、身近なところにこんなにもおどろおどろしく、神々しい世界が存在している。カメラを持ち、シャッターを切ることで、これまで見えなかったものが見えてくる。写真の醍醐味を教えてくれます。(前川)

12月号「水辺の宴」加藤みちよ(北海道)

12月「水辺の宴」加藤みちよ(北海道)

【選評】静寂に包まれたブルートーンの世界に、早朝の空気感が伝わってくる作品です。その中に咲く無数の白い花と、流れる霧が幻想的な雰囲気を醸し出しています。妖精のような小さな花の群生ですので、全紙や全倍サイズにすると鑑賞者がこの光景を目の前で見ているような気持ちになることでしょう。PLフィルターを外してもっと速いシャッタースピードで撮ったなら霧の描写がよりハッキリしたのですが、いつまでも見ていたい美しい北海道の情景です。(米)