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2019年度 モノクロ作品招待席

2019年度 モノクロ作品招待席 選評 立木義浩 第1位 浅田よしつぐ(静岡/ニッコークラブきらり東海道支部) 「敷居」7月号推薦 立木 普通はこんなところは撮らない! 敷居だよ。でも、空間を四つに割った境界線でもあり、それぞれに違った表情が見られるのが実にいいよ。たしか長野県なんかは多くの県とつながっているよね、そんなのを思い浮かべた。 ――長野はかつて十州と境を連ねていました。 立木 世の中は境界線の問題によって紛争になるわけで、興味深い視点だよ。歩く人物を少しブラして入れることで写真に動感も加わったし、ひな人形も旧家であることを伝えてくれるし、敷居を主役にして、ほどよい脇役によって物語が広がっている。         第2位 岩崎和生(三重/五人囃子) 「港祝日」5月号入選 立木 お祭りかな、荷台の上で満面の笑み。ネクタイを締めて、ハットをかぶって……違和感があるのが面白い。この鳥羽って、江戸時代は船が行き交うのに風待ちしたり、悪天候から避難するために使われた「風待港」と言われていて穏やかなはずだけど、低気圧区の雲が垂れこめたのもいい塩梅だね。 ――この笑顔なら青空のほうが似合いそうですが。 立木 そういう当たり前の組み合わせをどう超えていくかも、これからの撮影では意識したほうがいいんじゃないかな。確かに絵としては成立しやすいけど、想像を超えることはない。九鬼水軍の拠点だけに船乗りが豪快に酒を飲んだんだろう、破顔一笑のお父 さんがすばらしい。   第3位 河合浜代(静岡/ニッコールクラブきらり東海道支部) 「危険地帯」8月号推薦...

2019年度 組写真の部

2019年度 組写真の部 選評:清水哲朗 第1位 加藤真希(三重/愛写道,日本リアリズム写真集団) 「街」10月号推薦 あんなことやこんなことが煩雑に入り組んでいる街中。カオスと文字化するのは簡単ですが、写真で具現化するのは意外と難しいもの。①のハトからの始まりは意外性があり、シャッタータイミングも良いですね。②③はすれ違いざまのノーファインダー撮影かもしれませんが、画面の傾きによる不安定感、息苦しさ、光と影で響かせる余韻などアプローチも構成も見事です。一見バラバラな3枚ですが、まとめることで巨大な力となり、めまぐるしく流れる街の様子を巧みに描いています。これぞストリートスナップ。人によっては恐怖を感じるかもしれません。タイトル「街」は可もなく不可もなくですが、仮に「同時刻」というタイトルだったらより想像力が働き、事件性や恐怖感をさらに煽れそうです。     第2位 保坂兼司(東京/写真集団 剣) 「下町花火」11月号推薦 惚れ惚れするような、いい作品ですね。1枚1枚のクオリティが高 く展開も見事。路地で花火を楽しむ住民の様子が手に取るように伝わっ てきます。①主役は住民と最初に伝えることであとは成り行きを見せるだけの効果的な構成です。②③はドンドンと打ち上げられる様子を2枚並べることで花火の賑やかさと臨場感を描写。イスに座る住民からはどんな花火が見えたのだろうという見る 側の疑問にも答えています。また③はベランダで楽しむ別の住民と自転車を止めて見上げる人物を写し込み、この界隈の人々皆に愛される花 火であることを伝えて余韻を広げています。④はこんな楽しみ方もあるというサービスカットで静かに終えていく。路地は作者得意のテリトリーですが、まざまざとその実力を見せつけられました。         第3位 吉川優子(北海道) 「歓楽街のヴァイオリニスト」5月号推薦 キーワードは「謎」でしょうか。確かにそこにいるはずなのに、空気か幽霊の如く、誰も気に留めずにそれぞれの世界に没頭している不思議な空間に心がざわめきます。内容を理解しようとタイトルに救いを求めても、この女性がモデルなのか実存する流しのヴァイオリニストなのかもわからずさらに困惑。気づいた時にはまんまと作者の術中に陥っているのがこの作品の魔力です。夜、雨のシチュエーションに加え、はっきりと見せない状態から始まり徐々に女性の姿を見せていくことでモヤモヤを取り除いていく展開もよく考えられています。画面構成も①③④のような水平垂直を意識したものだけでは綺麗すぎてフィクション感が出ましたが、斜め構図の②が入ったことで、非演出の可能性を感じさせたのも実に巧妙でした。      ...

2019年度 マンスリーフォトコンテスト 中・上級コース ネイチャーフォトの部

2019年度 マンスリーフォトコンテスト 中・上級コース ネイチャーフォトの部 第1位 朝田理恵(東京/Chakoフォトクラブ、日本写真家連盟) 「妖牙」11月号特選 満天の星空に氷柱という異色の組み合わせです。フィッシュアイレンズを使っているため、絞り開放でも被写界深度が深く、手前の氷から星までしっかりピントが来ていて、気持ちいいですね。この時間にこの撮影ポイントにたどり着くにはそれなりのリスクを伴ったと思いますが、そのかいあってか、素晴らしい作品になりました。ただし、かなり氷柱に近づいているので、十分注意してください。 【選評:菊池哲男】       第2位 山之内 徹(東京/写団薬師・多摩) 「祈り」2月号特選 立山という信仰の山を舞台に神々しさを感じる作品です。虹彩の量を被った太陽を指差すように突きあげられたケルン(人工的に石を積んだもの)のインパクトが絶大で、何か精神的なものを感じました。なぜか映画『独裁者』でヒトラーにふんしたチャップリンが地球儀で戯れるシーンを思い出しました。技術的にはシンプルな構成の中、月の輪郭を見せるようなアンダー露出にしたのが成功しています。 【選評:菊池哲男】           第3位 高橋 清(東京/KJ須山会,JNP東京支部) 「冬彩に憩う」12月号入選 極寒の冬景色の中で、優雅に佇む白鳥たち。森を流れる川の揺らぎと朝日のあたたかな色彩があいまって、寒いはずの景色に体温を感じさせる作品に仕上がっています。1/400秒の速いシャッター速度とF13の深い絞りで、被写体の細部をしっかりと描写し、作品にいい緊張感を与えています。上質な映画のワンシーンを観ているかのような物語性のある写真ですね。 【選評:GTO AKI】...

2019年度 マンスリーフォトコンテスト 中・上級コース 自由の部

2019年度 マンスリーフォトコンテスト 中・上級コース 自由の部 第1位 小池三智恵(長野/楽々写真会,二科会写真部長野支部) 「達者な友」8月号特選 リラックスした被写体である2人の体勢と表情を見ると撮影者は見事に透明人間となることに成功しています。光も構図も完璧で、おばあちゃんたちのファッションも古く感じず最先端であると思えるほどです。表情も素晴らしいですし、左のおばあちゃんの手の動きや2人の足にすら表情があります。背景のガラスに写ったわずかな青空に爽快感を覚えます。 【選評:元田敬三】         第2位 岡本早苗(徳島/渭東クラブ,NEO) 「花火の日」7月号特選 花柄の浴衣を着て花火見物に向かう少女たち。化粧をして少し大人っぽく見える姿を披露するという密かな目的もあるのかもしれない。夕方の西日に照らされた2人の姿と、高く盛り上がった夏雲と の対比は、青春を謳歌する彼女たちにふさわしい 構図である。向けられたカメラに気付いて一瞬「きっ」となった顔つきが、この年頃の女の子の存在感を示して魅力的だ。 【選評:英 伸三】     第3位 餘野照彦(大分/全日写連) 「藪」2月号入選 茂った藪の中に光が差し込み、サザンカの赤い色を強調しています。画の中に引き込まれるような作品でずっと見ていても心地よいです。絞りを開放F1.4で撮られています。ということは最終的な画のイメージがしっかりできており、手前から中間、奥へと連なる1枚の写真が持つ多層的な画面構成を理解している方だと思います。素晴らしいです。 【選評:元田敬三】    ...

2019年度 フォトコン・スクール 初級コース ネイチャーの部

2019年度 フォトコン・スクール 初級コース ネイチャーの部 選評:石井秀俊 第1位 北野真弓(大阪/フォトクラブめだか) 「紅ひらり」10月号銀賞 黄色く輝く背景がやわらかなS字を描き、そこにモミジがひらひらと舞う、絵に描いたような美しさです。北野さんは、クモの巣にかかったモミジを素敵に見せる背 景のイメージをしっかりと組み立てています。ぼかしの表現は、レンズワークだけで なく明暗差によっても変化するので、明暗差が小さい同系色を選ぶと優しいボケを表現できますね。         第2位 前田昭人(兵庫) 「霧中に仰ぐ」2月号銀賞 霧が美しいグラデーションを生み出し、そこに物語を感じるシカの姿をとらえているのが素敵です。紅葉した木に優しさを感じる霧、そして控えめに配置したシカと、それぞれに役割を持たせた無駄のない構図ですね。 ホワイトバランスをアンバーにして雰囲気を演出しているでも、前田さんの力量を感じます。           第3位 May(愛知/キヤノンフォトクラブDEXT名古屋) 「ちいさな大冒険」3月号銀賞 優しい雰囲気の空間をアリが冒険する、童話の1ページのような作品ですね。こうした作品を制作するには、事前にしっかりとしたイメー ジを持っておく必要があります。また、計算された背景や...

2019年度 フォトコン・スクール 初級コース 自由の部

2019年度 フォトコン・スクール 初級コース 自由の部 選評:藤村大介 第1位 二宮ちあき(愛媛) 「ちびっこダッシュ」8月号銀賞 Tシャツアートを絡めての作品はよく見かけますが、うまい具合に子どもたち が収まりましたね。二人の顔 や手の向きもよく、Tシャツが風になびく感じも素敵です。変に格好をつけずストレートにとらえたのがよかったです。コントラストが高めなので、もう少し軟調に仕上げるとイメージが柔らかくなり、白トビも抑えられます。       第2位 中谷智子(静岡/キヤノンフォトクラブ静岡) 「HIGH PRESSURE」8月号銀賞 一瞬何かよくわからなかったのですが、蒸気とバルブというのがブレた手から 読み取れました。手が写っていなければわからなかったでしょう。シャッタースピードが絶妙で、迫力や動感、形の面白さなどがこの速度だから表せています。シンプルですが迫力のあるよい構成です。画面一杯に蒸気があれば、より迫力のある写真になります。           第3位 加藤みちよ(北海道/写真集団洞爺) 「視線」12月号銀賞 うまく考えられた作品ですね。目の穴に背景のボケを配置するなど、普通は 思いつかない素晴らしいアイデアです。撮影時に数ミリ単位でポジションを探した苦労が想像できます。左右の色を意識し、特に青い目の中心が明るく立体的に見えるのも印象的です。爽やかな背景より、思い切って左の暗い背景を大きく取り入れたほうが面の印象に合っていたでしょう。...